昭和の風林史(昭和五八年九月二十日掲載分)

小豆・秋の日のつるべ落し

小豆は先限二万八千円台を取るまで売りのままだ。輸大は天井してまだ日が浅い。

小豆の当限は(大阪)安値八月20日から三千八百余円を新値九手で戻したが、一月限は新値三手で千百余円を戻すのが精一杯だった。

強気は小豆の先三本が、もっと買われてよいと思っているが、相場波動では前二本が気一杯戻して、戻した分を今消すところ。

そうなると、お役を済ますのを待っていた先三本が、もういいだろうと下げに入るし11限も肩下がりで決して八月20日の安値で止まった下げとはいえない。

産地は九月に入って作柄回復顕著。全道80万俵収穫の予想。

恐らく産地定期から新しい崩れに入るだろう。

いま七百枚の黒い大納言を宝のように持っている人達は、持てば持つほど損が大きくなり、結局は半値以下で投げることになりかねない。

数年前に大手亡の大ヒネが三分の一になって養老院行きとなったことがある。

安徽小豆騒ぎのその前の年だったか、六万円(現物市場)を付けた小豆が古品になって二万三千円まで叩かれた。

それと同じで黒い大納言は半値七掛けぐらいまではいずれ値を消す。

東北六県青森小豆が11月には出てくるし、北海道も馬鈴薯の収穫終わって小豆の刈り入れに入る。

ともあれ前から崩れる小豆はタチが悪い。先二本の二万八千円目標。

輸入大豆の週間棒はシカゴも穀取も大天井線。

ファンダメンタルズがどうであろうと天井した相場は戻しては下げ、戻しては下げる。

穀取輸大は一月10日(東京)三五一〇円が大底だった。週足36本で三段上げ完了。

買い玉は高値で玉がふえているから戻しては売られ、戻しては売られる長い旅。

●編集部註
 先日、商品業界の生き字引、鍋島高明氏が来社され、8月にパンローリングから上梓された「相場の神々」を献本頂いた。同社から昨年発行された「相場名人」の続編に近い。「相場名人」は商品先物市場で活躍した相場師達を中心にピックアップしたが、今回の本は商品先物に限定せず、古くは福沢桃介(福沢諭吉の婿養子)など伝説の相場師達が登場する。
 それだけではなく、この本は過去の鍋島氏の著作の答え合わせの側面も有している。「マムシの本忠」の追悼記事はその際たるものであろう。
 過去の勢いはないものの、80年代の穀物相場はまだかろうじて命脈が保たれていた。この時活躍していた相場師も、この本に登場している。