昭和の風林史(昭和五八年三月三日掲載分)

高いのがなぜ不穏なのだ

輸大期近高がなぜ不穏な動きなのか。言葉に気をつけろと言いたい。

小豆の取り組みは減ってここから自己玉を引いたら、玄人だけの、むしりあい。

証拠金は今以下に下げようがない。建玉制限も最大に緩和されている。

去年の強制解け合いが尾を引いている。小豆市場は信頼できない―。二度と小豆には手を出さないという人も多い。

ホクレンの出荷調整や役所の外貨枠操作に相場のロマンを失った人もある。

なあに天候相場を迎えれば、また人気を盛り返すよ―と楽観している人もあるが、年々歳々花相似たれど歳々年々人同じからず。

輸入大豆のほうは、期近が締まると〝不穏な動き〟などという。あるいは、スクイズだなどと。

売り屋が売り過ぎて、手詰めているのに、なにが不穏な動きだ。

もう一ツ変なのは、ヘッジ申請の今の制度だ。手の内のカードに役はないが、相手を降すためチップを積み増すポーカーゲームでも、輸大市場のヘッジ申請のような、不公平さはない。買い屋に対する恫喝みたいな相場売り崩しのヘッジ申請は、取引所が目を光らすべきだ。

輸大市場はヘッジ申請の現行ルールを手直ししない限り、いずれは大衆からソッポをむかれる。

さて相場のほうだが輸大市場依然として弱気支配。中豆累計九万五千㌧入荷。20万㌧成約のほぼ半分が入ったわけだが、値の安いところで、かなり実需にはまった。

これで三月も中豆入港遅れや商談進展せずなら意外と三月、四月相場は荒れそうだ。

それは不穏な動きというべきでなく、売り屋の叩き過ぎの反動というべきだ。

小豆は下がって困る建玉ポジション筋が声だけで煽りを入れる。やるだけやらせておけというところ。

●編集部註
 文中〝チップを積み増すポーカーゲーム〟という記述が。ここではトランプを使った本物のポーカーを指しているのかも知れないが、当時と今とでは若干このゲームの受け止め方が違う。
 任天堂から「ファミリーコンピューター」、所謂フ ァミコンが発売されるのは7月。それまでのTVゲームは、危険な匂いがする代物であった。78年にインベーダーゲームが大流行した後、80年あたりから市井にポーカーのTVゲームが出回る。「インベーダー喫茶」は「ポーカー喫茶」「ゲーム喫茶」に変わり、暴力団の資金源となるケースもあった。
 前年11月、このゲーム機賭博を巡って大阪府警で大掛かりな汚職事件が明るみになっている。