昭和の風林史(昭和五八年三月三十一日掲載分)

輸大の値頃観売り危険?

輸大の弱気は顔色なし。買い方回転が利く。小豆は傍観すれば値が消える。

この輸入大豆相場は、ちょっとや、そっとの相場と違うぞ―という見方になってきた。

というのも大衆筋の買いが降りつつある事。

万丈千騎出ずとばかりの買いだった大衆が、やれやれの利食い。そして、これから値頃観で売ってくる。

それは東西取引員自己玉の売り枚数変化を見れば一目瞭然。

売りピーク時二万三千枚あったものが今一万七千枚。

当面は交易会での中国産大豆価格と六月積み以降の契約数量が材料。シカゴが上昇トレンドに乗っているだけに、中豆も値段を上げてこよう。

またIOM大豆の価格水準切り上がり。フレート上昇。円安傾向とくれば、叩き材料だった中豆が、逆に火つけ材料に変化する。

これで九月限登場となって強力な機関車が、もう一両先頭に連結される。

流れとしては四千七百円→五千円目標である。

月末、月初めに、果たしてどれほどの押しが入るか。

われわれは早くから強気して、だいぶくたびれたが、待つこと久しい本番これからというところ。

小豆は商いが細るとヘラヘラと値が消える。

戦前、近衛さんは蒋介石を相手にせず。小豆の売り方、ホクレン相手にせず。

驕るホクレン久しからずともいう。現物をタンクして、定期を締めて、それが相場になると考えるのは思い上がりだ。

九千円台は、仮りに三万円を付けても大丈夫な準備でベトコンの如く売っていけばホクレンの三月決算終わったあとの相場は実勢悪と豊作尻の、見たか、これがテコ入れ相場の末路あわれ―という姿になるわけだ。

ゴムは弾みをつけて切り返したが、これがないと次の下げが甘くなる。買うだけ買わすところ。

●編集部註
 ここで登場する〝近衛さん〟とは近衛文麿の事を指す。歴史を振り返ると、「あの時こうだったら」というイフは数あれど、「近衛文麿があそこであの時ああ動いていれば」とつい思ってしまう残念な総理大臣として後年評価されている感が強い。
 筆者も以前、福田和也が書いた石原莞爾の評伝「地ひらく―石原莞爾と昭和の夢」を読んで、近衛文麿を「色々と残念な政治家だなぁ」と思った。
 因みに彼の長男、近衛文隆はシベリア抑留中に死亡。その生涯は「夢顔さんによろしく」という本になり、劇団四季でミュージカルにもなった。