昭和の風林史(昭和五八年三月七日掲載分)

手ぐすね引いて押目待ち

輸大は高値警戒心が強く熱狂買いするところまできていない。息の長い相場になる。

東穀輸大10万の取り組みで三万三千枚の出来高(3日)はダイナミックな市場である。

三月、四月限の売り過ぎが咎められた格好。

中豆、中豆と中国大豆入荷を、どれだけ叩き材料で宣伝されたか判らない。

まるで強気する奴は馬鹿か阿呆あつかいだった。

確かに中豆の成約は20万㌧だろう。そして遅れているとはいえ、船は港に大豆を積んで九万五千㌧入荷しただろう。

それは商売だから当然のことである。入荷して当たり前、入らなければ大変だ。

ビジネスの世界と相場の世界は、また別の次元ということを知るべきだ。

穀取相場を崩さんがための中豆成約ではあるまい。もしそれならばインポーターは名ばかりの相場師稼業になる。

期近二本の高値買い玉は辛抱の甲斐あって皆蘇生し、追証も、ほどけた。

そしてこれが、やれやれで降りる。相場はえてして降りたあとが高い。

三市場三日の出来高五万九千枚。二月七日の四万枚。一月十日の四万二千枚。大出来高は大底か、頭打ちしているだけに用心されるが、今回の相場は期近中心の棒立ちで大衆の先限飛び付き買いはなかった。

そして、これは現物が言われているほどダブついていない現われで、一にも二にも過剰ヘッジの足もとをすくわれ、売り屋の油断を衝かれたものである。

しかも基調は大底確認。出直り途上。先行き天災期を控え、大取り組み。

人気面は警戒色が強く安心買いになれないだけに、未だ熱狂せず、冷静な相場と見てよいと思う。

●編集部註
 〝やれやれで降りる。相場はえてして降りたあとが高い〟―相場師として数々のいくさ場の「匂い」を嗅いだ事がある人間しか紡ぐ事の出来ぬ、超ド級のパンチラインである。 実際、このパンチライン通り輸大相場はストンと落ちた後、ババーンと飛翔していく事になる。
 買い屋が買って売り屋が買うと天井というが、まだ売り屋が買っていないと見ているのだろう。
 大豆も、原油や金と同じく国際政治における武器弾薬となりうる。それは昨今、中国との貿易交渉で大豆が俎上に乗った事から見ても明かである。
 この頃、当時のアメリカ合衆国大統領、ロナルド・レーガンは、演説中に当時のソ連を指して「悪の帝国」と発言。物議を醸しだした。これも商品上昇の一要因となる。