昭和の風林史(昭和五八年七月十九日掲載分)

中段のモミを上放れよう

ホクレンや農協は農家の味方と思っていたが、相場に曲がると生産者を裏切るようだ。

小豆相場は一呼吸入れて再び奔騰態勢である。

作付け面積が大幅にふえていた(四万三千㌶)という農協筋の風説に力を得て売り方が相場をぶっ叩いたが、大冷害時に作付け面積の(相場における)ウエイトは低い。

要するにホクレン等が安値で売り玉が捕まったままで、これを救出したいのである。

だから期近を叩いたりして相場を潰しにかかる。

また、農家の手持ち(約二十万俵)を早く売らせようとする。

しかし作柄の悪さは農家が身をもって知っているし、来年と再来年の種子を確保しなければならず、少なくとも10万俵は保存されるだろう。

ホクレンや農協は農家の味方と思っていたが、定期相場のポジションが大曲がりすると、安値の売り玉可愛いくて、生産者をも裏切る行為に出る。

ホクレンは期近を叩いて相場が崩れた時点で売り玉手仕舞うべきを、相場観の違いか、更に売り追撃に出るなど、ますます窮地にのめり込んでいる。

また、市場の大手売り方(玄人筋)も相場を潰して安値売り玉を救出したいし、ドテン買いに回る場所を求めている。

しかしこの相場は潰れない。なによりも現物価格がそれを物語っている。

弱気は次期枠の早期超大型発券を騒ぐが、今の値段では役所もあわてようがないし、九月彼岸頃の作柄発表を見てからの作業である。

ともかく売り方は政治的、心理的、物理的に相場を崩したい一心だが、ことごとくそれらの行為が買い方に味方するように動いていくのが皮肉である。

相場は売るから高いし、人為の及ぶところにあらずである。

このような流れを見ていると11限あたり(あるいは12限も)三万四千円カイとくる日が近いように思える。そして五千円抜けは約束されているのでないか。

いうなれば申し分ない中段のモミを終わって再上昇段階の小豆相場である。

●編集部註
 官製相場のあるある、とでも言おうか。〝定期相場のポジションが大曲がりすると、安値の売り玉可愛いくて、生産者をも裏切る行為に出る〟という記述に成程と膝を打つ。
 勝手な妄想だが、ジョージ・ソロスと対峙していたイングランド銀行の現場責任者もこんな感じだったのではないか。
 官製相場に逆らうなと言われる反面、蟻の一穴という言葉もある訳で…。