昭和の風林史(昭和五八年七月二六日掲載分)

実に不思議な相場である

月末にかけて押してくれたら、その押し目の小豆は絶好の買い場になるだろう。

小豆相場は新値は利食いして、押したところをまた拾うという繰り返しが判りやすい。

天井の事は今の段階で考える必要はなかろう。

千円下げても千五百円下げても、それは押し目だ。

押してくると弱気が元気を取り戻して安いところを叩きにくるが、その売り玉がすぐに捕まる。

弱気は八千円騰げた相場を一万丁損している勘定だ。叩いては踏み、叩いては煎れるからそうなる。

強気は八千丁騰げの五千丁を取っておればまずよいところ。

弱気はここまでくるともう転換できない。行くところまで行く覚悟である。

それは役所の行政に期待するからである。自由化問題。予備枠や下期枠などを考え、そしていま踏むと幾らの損になるかを考えると、心身金縛りになる。

行政は確かに今後の相場の最大ポイントであるが、相場界では『行政は信ずべし、されど信ずるべからず』という格言がある。

行政が動いた頃には、ハトもカラスも飛んだあと。

そして、この相場の暴落一万丁を取りきるのは決して現在弱気している人達でなく、強気している人達がどこで天井するか判らないが、大下げ相場を取るのである。曲がり屋というものは天井を見つけた頃には買っており―となるものだ。

いずれにしろ今は中段のモミで、これをふっ切って行くのが八月早い。

過去のどの相場を見てもここまできたら、かなりの強人気になっている。

それが今回まったくない。

また買い仕手不在だし、取引所も騒いでいない。だから寿命が長い。

ともかく足かけ三年、丸二年下げた相場が二カ月そこらで天井は打たない。

月末にかけての調整(押し目)は買って十分八月相場に間に合う。

●編集部註
 このような相場展開を東京金相場で筆者は目撃した事がある。
 あれよあれよと下げ続け、1000円割れ、900円割れと来て、1999年9月16日、836円で〝コツン〟と音がした後、14営業日で110 1円まで上昇した。
 何故覚えているか。この日営業マンだった筆者は、新規契約を獲ったからである。840円で金先限を200枚買い。
 実は、その後の事をあまり覚えていない。その翌日、日頃の不摂生が祟って倒れ、即入院となったのだ。つくづく人は健康が第一と思い知らされた。