昭和の風林史(昭和五九年四月二十四日掲載分)

十分間に合う小豆の買い

信は力なりという。相場は勢いなり。目下の小豆は56年型の超大型のパターン

昭和56年の小豆波動が頭の中に映る。

前年の55年が62万六千俵収穫そして56年50万一千俵収穫。二年続いて不作。

56年相場は二月天井→三月押し目底。

あと四月末まで四千七百三十円(先限引き継ぎ東京)を騰げた。相場水準は、今の先限30㎏建にすると一万七千百八十円ということになる。

四月30日を頭にして五月25日まで二千七百円幅の押し目を入れた。

買い方の板崎氏は、この時、忍の一字で頑張った。

六月に入るや沸騰、また狂騰の相場に、市場は熱気に包まれた。産地の五月、六月低温が材料。

七月2日三万七千三百七十円でトレンド突き抜けの一番天井。三千三百八十円幅を崩して下限トレンドに触れたと見るや反騰。

なんと八月3日→25日までに四千八百五十円幅を切り返し三万八千八百四十円で大天井した。

売り方も、買い方も当時、甲子園の高校野球など、うわの空であった。

今の小豆は、なんとなくその時のパターンに似ている。(産地気温グラフ55 56年と当時の相場足取り相関グラフは当社発行小豆のファンダメンタルに記載。なおその当時の外貨割当や在庫等数表掲載)。

今年は60㎏建限月で消費地四万円相場を付けてしまうような気がする。

当面の相場としてはどんな下げかたをしても、七月までは、押し目という見方で一貫する年であろう。

それよりも、取り組みが増大していくようなら、上昇ピッチが速くなるから、あれやこれや自分の頭の中で弱材料を固持しないよう相場についていく謙虚さをモットーにしたほうがよい。

なにがどうだからではなく、相場は勢いであり、力であり、人気である。今は買うだけの小豆である。

●編集部註

 今回の文章で登場する「買い方の板崎氏」とは、当欄でよく登場する「桑名筋」と呼ばれた板崎喜内人の事を指す。

 板崎喜内人という人物をネット検索すると、出て来る事は出て来るが、沢木幸太郎の『人の砂漠』(新潮文庫)に登場するとか、10万を50億にした男等々…ばかりで、最近の情報がまったくない。

 先般、文藝春秋7月号にシンガポールに移住した相場師、長谷川陽三氏の近況が掲載されている話をしたが、なんとその中で板崎喜内人の話が出て来たのには驚いた。

 彼は生きている。が、とても切ない話になる。

令和2年7月3日記