昭和の風林史(昭和五九年二月十三日掲載分)

輸大は修羅八荒生き地獄

輸大は陰極圏に入ったのでないか。修羅八荒の生き地獄。小豆は超閑散場面。

NY株安貴金属安、シカゴ大豆安―。

国内円安、銀安、輸大安。

大阪輸大当限は四千円を割った。

思えば昨年九月22日に、五、七四〇円高値を買った二月限である。

一代足で千七百七十円幅を下げた。

これが一段下げ26本八五〇円。二段下げ22本六五〇円。三段下げ31本一一二〇円という下げかた。

三段下げの厳しさは総投げ陰の極に入っている。

商社の早渡し攻勢と中豆成約説など野も山も冬景色。刀折れ矢尽きた買い方は敗走また敗走だが、往々にしてこのような時に相場は底を打つものである。

しかも毎年大豆の相場は十二月~一、二月のあたりで大底が入っている。

安ければ製油メーカーがドント・ポッチイ。商社にしても値を崩して商売がうまくいくものでもない。

小豆は東穀の商いを見ていると実に寂れてしまった。今週は国会で小豆のIQ制度について公明党から質問が出るという話。

すでに高かろう、安かろう無関心という取引員店頭の様子は、小豆のセリを通す電話が激減していることでも判る。

大衆筋は輸大の崩れで投機資金を失ってしまい、玉整理が終わると閑な上に閑な場面を迎えそうだ。

そして来月は税金のシーズンということで気が重い。

銀はNY安をダイレクトに反映する。安ければ安いで難平買い下がればよいという今の銀の投機家である。

現場の営業も、お客さんもギリギリの証拠金でなく一枚八万円ぐらい入れて銀の相場に取り組むべきだという認識を持ちだした。

●編集部註
 「八百万(やおよろず)」「八紘一宇」「南無八幡大菩薩」など、古来から日本では漢数字の「八」を多用する事が少なくない。
 また「八方丸く収まる」という使い方がある事から分かるように「八」を「隅々まで」という意味合いで使う事がある。
 今回の「八荒」はまさにこれであり「国の八方の果て」を指す。つまり、「修羅八荒の生き地獄」とは「国の隅々まで修羅の世界」の生き地獄になっているという事。まるで令和二年の現在の様だ。
 ただ「修羅八荒」という言葉は造語。元々は昭和11年に公開されたチャンバラ活劇の題名だ。昭和27年に御大、市川歌右衛門主演で東映が再映画化しているが、小豆の記事にこの題名を持ってくるあたり、シネマディクト(映画狂)の風林火山の面目躍如といえる。
 当時、冷戦の中で伏魔殿であったソ連の書記長が死んで、不穏な空気が流れていた記憶がある。