昭和の風林史(昭和五九年一月十二日掲載分)

市場衰退の根幹はなにか

今の小豆市場は末期的現象と醒めた目で見、離脱していく風潮がますます顕著だ。

農水省の商業課(取引所行政担当)の市場管理担当官は『昨年12月頃から小豆一月限について建玉がほどけていくよう期待していた。現物(新穀)が逼迫気味の時だけに、取引所当局も市場管理について遺憾なきよう指導している。まして小豆市場の振興策が検討されようという時期だけに、一般委託者から不信感を持たれるような行為は厳に戒めなければならず、同時に当限の売り玉買い玉とも、ほどける方向に努力してほしい』―と。

全般に取引員営業は『13万円証拠金の小豆なら、15万円証拠金のゴールドがよほどスッキリした気持で投機ができる。小豆市場は理事長、協会長、市場管理委員長などの店の建玉に逆らったら不利だというような、どうにも判りにくい内部要因を、一体お客にどう説明すべきか。まして今後シルバーも上場されるのだから、三晶がどう、農水の畑振課がこうと、秘密のベールの中での行政による価格操作的、そしてホクレンの庭の中での相場などまともに取り組めない。更にいえば、痩せた市場で、鳥なき里の蝙蝠か、まるで病気としかいえないようなハナ落としをする神戸のスキャルパーが市場を一層不人気にしている』―。

要するに小豆市場は末期的現象というしかない―と世評は厳しく、厳しいだけならまだしも、見切りをつけてしまう人が多い。それが薄商いとなり、取り組み細りとなる。

『これでは幾ら市場振興策をやっても、不人気の根幹が市場構造にあるのであれば、小手先の振興策は一時的に大衆を寄せて、罠にかけるみたいなことになる』―と、醒めた眼で見ているのが実情である。

思うのであるが市場はこのようにして衰退し、滅びていくのであろうか。淋しい限りである。

●編集部註
 唐代の詩人、于武陵(うぶりょう)の作で『勧酒』という五言絶句がある。
 勧君金屈巵
 満酌不須辞
 花発多風雨
 人生足別離

 この詩を、無頼派作家太宰治の師匠にあたる井伏鱒二が「厄除け詩集」のなかでこう訳している。

 コノサカヅキヲ受ケテクレ
ドウゾナミナミツガシテオクレ
ハナニアラシノタトヘモアルゾ
「サヨナラ」ダケガ人生ダ

 そう、寂しいが「サヨナラ」だけが人生なのだ。
 映画監督の川島雄三はこの詩が大好きで、この一節を愛用した。
 更に川島の弟子の今村昌平は、井伏の代表作である「黒い雨」を映画化。カンヌ映画祭で賞を受賞する。「サヨナラ」は寂しいが受け継ぐ者がいればまた新たな出会いもある。