昭和の風林史(昭和五九年一月十一日掲載分)

厳しい批判が出ています

業界人は裏の事をすべて知っている。小豆市場の信頼が失われるのを恐れる。

渡し物がないのだから当限小豆を買えば値上がりするのは明々白々。

大手IQホルダーが外貨枠を残したまま輸入しないという、水道の蛇口を止めているから在庫は減るのが当然。

しかも定期を買いポジションにして、IQホルダーの特権を逆手にとって暴利をむさぼる図である。

役所は早期臨時枠を発表すべきである。異常な逆ザヤは先限が安過ぎるという見方もあるが、天候相場時に三万五千円以上は異常な高値だ―として抑制したことを思うと、行政の一貫性が欠ける。

東西取り組み合計は三万九千五百余枚。

先月の月初めは四万五、六千枚、その前の月も月初めは四万六千枚の取り組み。

市場が痩せたままということは新規に投機家が参入しないからである。

それにしても、これも相場と言えばそれまでだが、なんとも釈然としない気持ちの人が多い。

ない物売るのが悪いという言いかたもあるが、それを言うと先物取引の仕組みを根底から否定することになる。

言うなら当限に回るまで玉を持つべからず―であろうが、これとて売り方だけではなく買い方にも共通することでなかろうか。

それにしても二月も三月も輸入が絞られて、在庫の減少を見ながら、春の需要期を迎えれば、IQ商社の意のままである。

一般大衆投機家にとって、いよいよもって小豆市場は敬遠するしかない。

小豆の市場振興が検討されている時に取引所当局は、果たして公正な市場管理がなされているのかどうか信が問われる昨今である。

ともあれ現物は売れない、加糖アンは入る。現物の商売はさっぱりである。人々の気持ちはかなり苛立ちがみえてきた。

●編集部註
 小豆相場の落日を憂うこの文章が、1980年代中盤になされているのが興味深い。あれから40年弱の時間が流れ、事態は一層悪化している。
 世間がしきりと国産国産と言っている割に、お上は国産農家への愛がない。農林水産省が発表した2018年の食料自給率は37%。残り63%は海外の輸入に頼っている。 これでTPPやらEPAなどで関税が撤廃されると、海外から更に安い農産物や肉や魚がやって来る事は必至。更に食料自給率は下がるだろう。 先般、青森のニンニク農家による嘆きのツイッターを目にした。手塩にかけて育てたニンニクが1㌔=50円でしか売れないのだという。かくして生産者は疲弊、高齢化する。ここまで無為無策だったお上の罪は重い。