昭和の風林史(昭和五七年十月二五日掲載分)

輸大買い方薄氷踏む思い

輸大は風向きが強気に味方しているようだが、一巡買えば生糸、乾繭の二の舞いだ。

乾繭、生糸相場が崩れて関心がそちらのほうに集まる。

穀取市場では輸入大豆当限の納会が注目され、小豆は、いま一ツ盛り上がらない。

市場の噂では輸大当限買い方はM製菓も資金手当てができ、渡ってくるものは受け切ってしまうから納会八百枚の渡し物があっても売りハナになろう―と。

しかし、買い方なんとなく寒い気がする。資金面もさることながら、一ツ間違えたら逆ザヤの反動は大きい。

納会だけでは蓋をあけてみるまでは判らない。

一と場千丁崩れがないとはいえない。

市場全般の空気はIOMの船積み遅れ、円安、11月の渡し物不安、製油メーカーへの転売など、買い方に味方するものが急に目立ちだした。

そして人気も強くなり底入れムードが行きわたるところであるが、相場は陰陽回り持ち。

強材料が次々目に映り人気も強く一巡買いつけば、次は反動安に向かう。

要は大勢がどちらを向いているか?である。

小豆のほうも政策を過大に評価しているきらいがある。雑豆の自由化は遠のいた感じだが、だからといって三万円台を積極買いしていけるほど相場にエネルギーはない。

いまこんなことを言うと、お前は馬鹿か阿呆といわれるだろうが、過去10年間の小豆月棒でいうと、遠慮して下値二万五、六千円である。遠慮せず言わせてもらえば二万三、四千円が大局トレンドの落ち行く先になる。

55、56、57年と大きな山をつくって、いまはまだ下山の中腹に当たる。

●編集部註
 「人間万事塞翁が馬」という故事成語がある。
 ちなみにこの年、「人間万事塞翁が丙午」というドラマが放映された。これは前年に直木賞を受賞した青島幸男の処女小説のドラマ化である。
 またこの頃、日本で「殺人魚フライングキラー」というB級映画がひっそりと公開。その数年前「ジョーズ」のヒットを受け二匹目の泥鰌狙いで作られた動物パニック物の中でも、そこそこヒットした「ピラニア」という映画の続編であった。
 このB級映画のプロデューサーが昭和30年代に日活ニューフェイスとして小林旭と共に活躍した女優であったという事は意外に知られていない。
 彼女は人気絶頂の中で引退して米国に渡る。ロジャー・コーマンに才能を認められて映画プロデュ ーサーに。「ピラニア」ではジョー・ダンテを「殺人魚―」ではジェームズ・キャメロンを監督に抜擢する。後に巨匠となる彼らも当時は無名であった。