昭和の風林史(昭和五七年十二月二日掲載分)

小豆の買い場徐々接近中

小豆は大底を入れたがっている。買い場接近中だから、買い場をゆっくり狙うところ。

スーパージャスコ、ダイエーに納入している雑豆問屋筋は前年同期比黒豆五割減。小豆等四割減。金時三割減という落ち込みという。

暖冬と、柿、ミカンの安値などから和菓子類も売れ行き悪い。

お寺の坊さんが言うのに今年はほどまんべんなく、どの檀家をまわって聞くことも、先の見通しの立たない景気の悪さで、いままで経験したことがない―と。

小豆市場は、本来なら活発な思惑に出る穀取市場の侍たちが、買い玉高値に張りついて身動きつかない格好。

戦況を展開させるだけの兵力は尽き、気力また萎(な)えて、取り組み表の建玉数字が凍(い)て付いている。要するに強気筋は忍の一字である。

それらの玉が天運ここにきわまれりで投げたり切られたりするのが二万七千四、五百円。

しかし、そんな値があるかどうか。辛抱する木に花が咲くという。待てば海路の日和かな。失意の時すべからく泰然たれ。

筆者は二万七千円割れに崩れる相場があってほしいと思うが、ないように思う。あれば判りやすくなるが、これだけ人気がまっ暗闇の弱さでは、そんな下げは相場にできない。

思うのだが12月の15日前後が今年の大底でないか。そのあたり値段にかかわりなく強気してみたい。

それまでに下げて二万七千二、三百円があれば灰汁抜けとみるべきだ。

相場と悲観材料とは別々のものになる。分離するのだ。材料という材料は悪い悪いの総弱材料でも、相場は知ったらしまい。もっと先を予見して出直る。

そして日柄の薬がなによりの特効薬である。

だから相場は難かしい。難かしいから面白い。面白いから苦労する。

●編集部註
 現在ジャスコはイオンと名前を変え、地方の心臓部にがっちりと食い込み、その地方の商店街をシャッター通りにした挙句、最近は採算が取れないという理由で閉店するという問題が発生する。
 ダイエーに至っては、もう店自体がない。東京は碑文谷にあるダイエーは何かと政治的なデモンストレーションに使われた記憶がある。
 「沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史」という佐野眞一の本がある。現在、集英社で上下2冊に文庫化されている。
 そこにダイエー躍進のからくりが書かれている。それは、このスーパーが神戸で始まったという点と密接につながっている。