昭和の風林史(昭和五七年十一月十日掲載分)

小豆も輸大もチンタラ安

小豆は利食い戻し程度で、また下げる。この相場は投げきるまで、ひつこく安い。

小豆はチンタラ、チンタラ値が溶ける。

実勢に悪さに勝てない。

罫線の悪さは、まるで罫線初歩のお手本に出てくる売り線の見本みたいである。

先三本は三万円の壁が厚かった。

誰もが強気になったあとだけに、相場としては話にならない嫌な場面を迎えるだろう。

四月限の頭からかぶせてきた陰線四本。これは四月限の前途を暗示している。即ち二万八千円(ミスプリントでなく二万八千円である)これを割るというシグナルだ。

こんな相場見たことない―と強気はいう。

雑豆業界の体力が衰弱していること。商取業界全般が弱体化していること。相場師が、よれよれになっていること。不況三年、景気が悪く気力がない。

大衆(お客さん)が、こんなに売っているのに、なぜ下がるのだろうか?と首をかしげるが、二枚、三枚の大衆筋、決して素人でない。彼らは小豆と共に20年、30年という小豆の主(ぬし)みたいな人達である。

二万六千円があっても不思議でないと思っている。半値になった相場を何回も見てきているからだ。

世の中が変わっていることに気がつかないと、三万一千円だ、やれ二千円だと、寝言みたいなことをいう。

輸入大豆の東京当限は綺麗な順ザヤになった。

大阪輸大当限野中の一本杉に風当たりが強くなる。

この大阪当限の罫線の悪さといえば、まったく話にならない。

線はなんでも知っていたという歌がある。大阪当限の四千百円割れ、先のほうの限月の三千九百円台が十分に予測できる。

小豆、輸大の売り玉は、あわてて利食いしなくてもよい。一日一善。

●編集部註
 ある一定の世代なら、最後の「一日一善」は時代の共通言語である。
 山本直純が作りし曲に乗せ、子供たちが『戸締り用心、火の用心』と歌い、当時の人気力士であった高見山や山本直純が纏を振りながら子供たちと練り歩く日本船舶振興会のCMが当時は毎日流れていた。しかも、月曜日から日曜日まで毎日歌詞が違う。そして、全てのバージョンの最後に好々爺が登場し『一日一善』と叫んでこのCMは終わる。
 この好々爺こそ笹川良一。表向きは日本船舶振興会(現在の日本財団)の創立者、世間では「右翼の大物」「政界の黒幕」とされるが、伝説的な大相場師としても知られる。