昭和の風林史(昭和五七年十一月二二日掲載分)

小豆は上昇する力がない

小豆は安い節を売りにいかず、強く見えたところを売り上がる気なら判りやすい。

小豆相場は生産者団体や農水省当局の価格維持希望に敬意を表して、安いところは売らない。叩かないようにする。

しかし戻ったところを売るのは各人の相場観でこれは自由である。

相場は政策にも左右されるが、実勢には勝てない。実勢即ち需要と供給。

いま仮りに輸入枠を零にしても、台湾からは加糖餡を入れる流れになれば、北海小豆は一部高級菓子用の需要のみで、定期用の道具という流通構造の変化をまねき、生産者団体は墓穴を掘りかねない。

役所も、増反運動という鹿を追う猟師山を見ずの感だが、需要を無視した政策は必らず失敗する。

それと、その時の都合で外貨発券を見送ることになれば中国、台湾の輸出側は、北海道が不作の時でも供給できない―という態度にでるかもしれない。

だから、その辺のことを考えると、豊作の時は豊作らしい相場をまずだして、自然の流れにまかせるべきである。

先限は高値から千五百円下げて、半値戻しの九千円台を売りたい人が待っている。

先のほうの九千円台の盛(も)りのよいところを売っておけば、少なくとも千五百丁下げが取れるような相場つきとみる。

今月納会は品物も少ないが、受けて妙味があるわけでない。

受けて、みすみす損というものを思惑で受けていくほど、ゆとりはないはず。

線は15日、16日足軽く立てた陽線が利いているが17日利食い押し、18日材料買い、19日反省売り。

輸入大豆は円高で長期限月はその分下げがきつかった。

円は一㌦=二四〇円に向かうトレンドに乗っている。

問題の当限だが、大暴落の十字架を背負っている。

●編集部註
 「鹿を追う猟師山を見ず」とは手厳しいが、事実ではある。
 事実、その時その時の状況に応じて、後から見ればその場しのぎの策で対応して、取り返しがつかなくなってしまった。
 中国の話であったか、日本の話であったかは忘れてしまったが、昔の医術の話を思いだす。
 下手な医者は、頭が痛ければ頭痛薬、熱が出れば解熱の薬と、諸症状に応じて投薬する。それでは何の解決にもならない。
 良い医者は諸症状から根本的な病原を探り、それを取り除くように薬を処方するのだとか。
 諸事に通じる話である。