昭和の風林史(昭和五七年六月二日掲載分)

雨はどしゃ降り水は満々
  
大局的相場観は売り一貫。本間宗久伝『六月崩し見ようの事』。今月は決壊月だ。
小豆11月限は、まずまずのサヤを買って登場。向う半年間の航海に出る。
市場は、なんとなく掴み難いお天気だ。
五月の相場が余りにも騰落激しかったので、いささか疲れもした。
発芽期を控えて仕切り直し。強気はあくまでも強気。売り方は、どこまでも売っていく。
お天とうさんが行司役かもしれない。
先限引き継ぎ線で上値三千三百~五百円のところがほしかった。この上値を取らないと下げるに下げられないトレンドだった。
その意味で、新穀のサヤの分を買って、上値取りの役目を済ませた。
去年は六月中の上昇がきつかった。相場水準は今と同じところから出発して、棒立ちした。
産地の天候が非常に悪かった。大幅減反も響いた。
今年は増反。豆王国の十勝平野が三割増。お天気も出足は順調である。
11月限の、サヤを買った分は、早いか遅いかで、あとから埋めることになっている。だからすくなくとも11月限は生まれ値から千円幅を下げると思う。
在庫増。入船順調。発芽好調。青田ほめ。全道作付け面積判明―。幾つもハードルがある。どれかで転ぶと人気はドッと片寄る。
九、十月限の三万二千円が頑強に見えても、この下千丁は奈落につながる。
11月限が伸びきれずに垂れてきたらこれはもうヒネ限月は、どしゃ降り。
相場というものは資金があればあるほど損が大きくなるもので、それは資力を過信して相場の流れに逆らうからである。

●編集部註
 〝相場というものは資金があればあるほど損が大きくなる〟とは、けだし名言である。
 煎じ詰めていくと、最後は人間性なのかもしれない。古くはギリシア悲劇、中国は邯鄲の夢を経て、シェークスピアの戯曲を横切り、ブレヒトからひとっ飛びして現代のジェネレーションXまで、金で高転びして落ちてゆく高慢ちきが登場する。
 相場とは関係ないが、82年6月の日本で新たに転がり落ちる人物が世に登場する。
 きっかけはその2カ月前の週刊誌。老舗百貨店の社長が専横を極めているという記事で、実際にその一端が公正取引委員会の審決を受けるのが6月であった。その3カ月後の9月に取締役会で社長職を電撃解任。この時に放った「なぜだ!」という言葉は流行語になる。
 後に、彼は愛人と共に刑事訴追され、上告中に亡くなってしまう。