昭和の風林史(昭和五七年六月三十日掲載分)

業界が悲鳴をあげている

こんな状態がいつまでも続くはずがない。天が決着をつける時が必らずくる。

増証規制も第三次となれば、ぼつぼつ用心するのが人情。

期近二限月の段階的増証は、売り玉の手仕舞いを先行させた。

崩れに移れば期近ほど手応えがあるけれど、ともあれ仕舞っておこう。

その分を12月限売りにまわす。長期作戦の気構え。

産地相場がぬるい。作況は雨のほしいところへ雨。低温も山を越した。ホクレンが売ってくるのは、それなりの作柄見通しを立てての事であろう。

また輸入商社の訪中は、小豆成約を急ぐ動きとも受けとれる。

七月上旬には、なんらかの答が出るような気がする。それは日柄で限界を過ぎているのと、ひとまずは踏んだということ。

売る側も段々賢くなった。ドーンと安いところを叩いたから苦労させられた。長期限月の高いところを売るのは怖くない。

概して手を出さない。極端な薄商いで、業界全体が悲鳴をあげている。

先二本の証拠金をできるだけ抑えて市場管理の面で配慮しているが、期近のほうに玉が張り付いているから、回転も利かず新規も出にくい。

16万俵の現物の偏在は流通段階にも商いの低下をきたし、逆ザヤは消費をより悪くさせ、定期は閑古鳥鳴くは、困った現象である。このように、あらゆる面に迷惑をかけて、それが成功するはずがない。

しかし打つ手がないということなら、辛抱するしかない。

七月も受け、八月も受け、いいじゃないか受けさせれば―というしらけた見方。これが怖い。

〝七色のパッチ〟で有名な神戸の会員K氏『売って駄目なら買ってみろで買って、はじめて判ったが、なんと重たい相場よ』と、あきれていた。多分、それが実感だと思う。

●編集部註
 崩落前夜。今の相場に例えるなら、週明けに大陰線を記録したNY白金の前週のようなものか。
 二時間もののサスペンスドラマなら、犯人と船越英一郎が崖の上での対峙があらかた終わって、エンドロールが流れる直前に来ている。
 この年のこの時期、日本のヒットチャートの一位は岩崎宏美の「聖母たちのララバイ」。この曲こそ、その前年9月に始まった「火曜サスペンス劇場」のエンディングテーマであった。
 この時、小豆の買い本尊も判っている。証拠金も上げるだけ上げた。商いも閑散で次の展開待ちの段階まで来ている。頭も重たい事この上ない。
 つまり、あとは下がるだけの段階に来ている。