昭和の風林史(昭和五七年八月四日掲載分)

むしろ高値は利食い専念

カンカンの強気で高場を?むと苦労するだろう。人が思うほど値は伸びないとみる。

一日現在十勝地区小豆生育は並み~やや良。上川地区南部でやや不良三日遅れ、北部不良四日遅れ。

ホクレンが強い。帯広筋も積極買いだった。

玄人という玄人は皆強い。一月限に一体何を渡せるのだ?という考え。

玄人筋や現物筋を強気にさせる根拠は揃っている。それはそれでよいと思う。しかし理論と相場はまた違うものである。

一般投機家と玄人会員や業者筋の違いは手数料の抜け幅の差である。

今の小豆は玄人中の玄人ばかりのゲームであるから、手数料の抜け幅によるハンディは大きい。

もう一ツ考えておきたいのは〝新しい血〟が入らない。小豆市場の今の投機資金は同じ質のものばかりである。

という事はゼロサムゲームで売買毎に手数料分だけが減少する。

新しい資金が流入しない限り、取り組みは、ある限度までふくらむと、もう大きくならない。

目下市場では〝金屋〟の売り玉が狙われている格好だが、この筋は解け合いで利益を得たし、安値を叩いたが、上のほうの玉も多いから、まず平均三百円ぐらいの引かされかたで高値待ち、売り場待ちのようだ。簡単に踏みは取れん。

このようにみてくると、誰も彼もが安心買いしたあたりは気一杯で、11、12限の千円乗せは、利食いこそすれ飛びつき買いは感心できない。

目下のところ弱材料がない。

あるとすれば弱材料のないことが弱材料である。

●編集部註
 炭鉱のカナリア的な文章である。実際の炭鉱のカナリアは危機直前に炭鉱夫の前で亡くなって危険を知らせてくれるが、これが文章になるとそうもいかない。
 ましてや、過去に逆方向の相場展開を主張し続けた挙句、担当紙面をお詫びの言葉以外真っ白にして新聞を発行した人物の警句である。更にこういった警句が現実のものになるのは実際よりも少しズレ込む傾向がある。「またぁ、風林火山がなんか言ってらぁ」程度に読者が受け止めていたきらいは充分にある。
 幽霊と相場はさみしいところに出る―。
 多数派が冷笑気味にこのカナリヤ文を受け止めれば受け止める程、予測は現実のものになり、耳目を集めれば集めるる程、非現実になるのは皮肉としか言いようがない。