昭和の風林史(昭和五七年八月三日掲載分)

サヤ買い切れば伸びない

全般に強人気だが強気の中にも売りたい強気がまぎれ込んでいる。逆張りだろう。

今の小豆相場は、買いたい弱気と、売りたい強気にわかれる。

買いたい弱気とは三万円割れの11・12限はあってほしい。しかしその値段は買ってみたい。

売りたい強気は、1限の千五百円前後があってほしいが、あれば売りたい。

総体に市場人気は強気支持である。

しかし、相場の体質は逆張り型に入った。

二万九千八百円の三万八百円という千円幅の圏内で様子を見るところ。

現物筋は当然のことながら上げ賛成である。

繋いでいたものは、解け合いで値ザヤをもらったが、手持ち現物は九月の声を聞くまで売れない。

従って、11、12限の高いところ(三万一千円あたりから)は売りヘッジをかけたい。

しかしそれも産地の作柄次第で考えは変化する。

だから、ここ一週間、十日ほどは、片寄った一本道の相場はないように思う。

となると、閑散痛という病気がでてくる。

相場の一ツの方法に、逆ザヤならあくまでも買っていくが、順ザヤは、徹底して売っていく方法がある。

これだと、今の小豆の先限は売り対象になるわけだ。

さて、気一杯先限がサヤを買ったあとで、市場人気が一段と強くなるようなら要警戒である。

11、12限が足軽くついていくならよいが、27日、29日の頭を抜いたあたりで鈍ければ、これが高値?み玉になりかねん。

現物当業者筋が手揃いで上げ賛成ということは、上がったところを売りたいという魂胆なのだから、手放しで強気するわけにいかないと思う。

●編集部註
 幽霊と相場はさみしいところに出る―。
 上げ賛成は判るが、この時の小豆市場は一敗地に塗れた売り方の玄人筋の恩讐が充満している。本文中の〝徹底して売っていく方法が〟という部分にその片鱗が伺えるのは筆者だけであろうか。
 ヤレヤレの売りという存在も見逃せない。
 東京市場の日足を見ると、3万1000~20 00円の値位置は、7月頭に乾坤一擲で買い勝負をかけて、図らずも地獄八景亡者戯に巻き込まれし人々の玉がある部分と重なる。
 相場参加者の全員が欲望者ではない。それに7月中盤からの反騰でまだ押しらしい押しも出現していない。とりあえず、この場から退散して一旦場の様子を見ようと考えるのは孫氏の兵法だ。