昭和の風林史(昭和五七年一月五日掲載分)

一月相場の基調は緩まん

◇…一月相場は高いとみる。輸入成約などで押したところは買い場になるだろう。

◇…あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いします。

久保田万太郎に『一月や日のよくあたる家ばかり』というのがあります。

読者の皆様がたと商取業界に今年は、日のよくあたる年であって欲しいと願います。

◇…さて、小豆相場の強弱ですが、昨年暮、いろいろな方から言われました。

『風林は風林らしく書いてほしい』と。『曲がってもよい』。そのように多くの人に言われました。

◇…考えてみますと自分自身は『大当たりしなくてもよいから大曲がりだけはせんように』―と、そのような考えがどこかにありました。馬齢を加えて消極的になったのかもしれません。

そういうところを読者は見抜いて、『風林は代筆と違うか?』、『風林は体調をこわしていないか?』とうちの記者に問う人があったのだと思います。

◇…それを聞いて、読者は、なにを求めておられるかがよく判るのです。

新年は、昔の風林に戻って、読者のご期待に添いたいと考えています。

◇…新春の相場については、強弱がわかれたまま越年したから、昨年暮の続きみたいなものである。

◇…弱気は、あくまでも弱い。それはそれで信念があっての弱気である。

◇…筆者は、新しい上昇トレンドに乗っていると思う。だから強気で三万六千円(先限)があるとみる。

◇…輸入成約などで時に千円、千五百円の押しが入っても、基調は上向きだと判断し、とりあえず三万五千円。えびす天井を用心したり節分天井を警戒したり。だが押しは買い場だと思っている。

●編集部註
 この文章を読んで、相場記者の大先輩と呑んだ時の事を思い出した。

 正確な分析記事を書く事が、読者のお役に立てると思っている私を、先輩はやさしくたしなめた。必ずしも当たる当たらないは重要ではないのだと。

 「理想的な相場記事は、やっぱり風林火山なんだよ。君も営業マンだったんだろ? 朝礼の後を思い出してみなよ。みんな投資日報をネタにあれこれと話をしてたろ?」

 確かにそうだ。曲がっている時の文章も、当たっている時の文章も、平等に話のネタになっていた。 

 ボヤキが話題になるのは、高座での居眠りが話題になる古今亭志ん生と同じく芸の一つである。

 相場は水ものである。 

 ゆく川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶ泡沫はかつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし―。

 それは、相場の流れに翻弄される人間模様を描くルポタージュである。