昭和の風林史(昭和五七年九月二十一日掲載分)

玄人筋は強気の小豆だが

薄商いだ。玉の出具合いで高下する。上昇力のない小豆は、下げ落ちるだけである。

生糸市場のほうは買い大玉と売り大手の抜け解け合いということで一般市場利用者は、密室での取り引きに嫌気している。一体どうなっているのか、さっぱり判らん。

こんな、まやかしのインチキ市場は玉がほどけてしまうと誰も相手にせんだろう。要するに生糸取引所滅亡の前の狂宴である。

小豆は百九万俵(九月一日現在)収穫予想の数字を基準にして強弱判断のところ。

どちらかというと玄人筋が強気である。

帯広のサヤつきが悪い。立ち枯れが出ている―等々。

しかし、相場の地合いからいうと、トレンドを上向きにしたがっているが実に頼りない。

商いの薄いところを煽るつもりで手をふれば、ある程度値は吊れても、実勢がついてこない。

相場は相場に聞け。これしかない。極力相場は相場に聞くようにしたい。

もう霜による怖さもない。絶対安心とまではいかないが、収穫期は年々早くなっている。

東西取り組み合計は漸増して四万枚を越えた。

解け合い当時二万三千枚だった。限月が建つごとに微増してきたが、今月新甫から四千枚ふえている。

大衆売りの自己玉買い。大衆売りの玄人買い。特に西市場は小豆に対する根強い投機層が多い。そして、これが相場上手ときているから店が食われる。

ともあれ週間棒も今週が日柄の分岐点である。はきはきした動きになろう。

●編集部註
 自己玉の必要性については理解出来るのだが、何も知らない素人は「向い玉と何が違うのか」となるだろう。
 そもそも向い玉など素人は知らないだろう、というツッコミを入れる人は漫画を読んだ事がないのだろう。全19巻、1600万部売れた「ナニワ金融道」の中で商品先物取引が悪徳商法のように紹介された影響力は計り知れない。この作品では、商品取引員が故意に顧客と真逆の取引を行っている事が、さも当たり前のように描かれている。
 一度ついたイメージを払しょくするのはなかなか容易ではない。〝まやかし〟の〝インチキ〟という印象がついた市場にお客さんが戻ってくるのはなかなかに難しい。
 思えば、昨今は深い思慮も読解力も洞察力もない人が「叩いても良し」と勝手に判断し、脊髄反射的にネットの世界で容易叩く事の出来る時代である。今なら大炎上案件であったといえよう。
 その時代にSNSが隆盛していたら確実に大炎上していた事件は何か―と、時々考える事がある。