昭和の風林史(昭和五七年六月二十五日掲載分)

買い方守勢で無駄な抵抗

買うほどに下げがきつくなる。中段での抵抗は日柄で底抜けになる。怖くない戻りだ。

小豆相場は大きなトレンドが中段の揉みになって、これが下に抜けきると三万円大台なんか問題にならず、大台割ってから三千丁という波動に乗ってしまう。

しかし三万一千円を死守すれば去年の10月、11月安値に対しての両足つきで青田底型になる。

しかし、いずれにしても今年の場合、作柄が順調に進めば、大勢的流れとしては下げトレンドだ。

目には目を、歯には歯を―でS安にはS高で応戦したが、買い方は買い玉がふえるばかりだ。資金においといないとは申せこれはまるで隅田川を逆のぼっていく鯨である。

鯉ならば鯉の滝登りといって、滝を登れば竜になる。

市場規模というものから判断しても、これだけ肥大した買い玉は、余程の天運が味方しなければ逃げられん。まして業界総資本の利益に反する勝ち逃げなどは、ありようがない。

われわれは物量を誇ったアメリカがベトナムから敗走した現実を見てきている。今の小豆の買い方には作戦がない。ひたすら買うだけでは勝てない。

もう一ツは、相場にはツキというものが大切である。去年は、ことごとく買い方にツキがまわった。

今年は、そのツキがもう切れたように思う。従って自重すべきだ。3の力が10になるのと、10の力が3になるのと違いは大きい。

また、攻めと守りの違いが出ている。買い方は守勢の域を出ない。守りは攻めの三倍の兵力を必要とする。

S安をS高で斬り返したからよいというものでない。納会受けて悪し。受けずんば更に悪し。要するに進退きわまっているのだ。

買い方は勝つことよりも生き残ることを考えるべきだと思う。強弱自由だが相場は死に体である。

●編集部註
 〝勝つことよりも生き残ることを考えるべき〟とはけだし名言である。「死ぬ事と見つけたり」と格好をつけても一文の得にもならぬ。
 相場とは全く関係ないが「生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言」というタイトルの映画を思い出した。60年代に松竹大船撮影所で活躍した森崎東という人が監督した、1985年のATG映画である。
 軽妙な喜劇を撮る職人肌の監督さんだが、取り上げるテーマが原発や痴呆など非常に重い。