昭和の風林史(昭和五七年四月二十三日掲載分)

春天井だからコウナッタ

流れが急になった。二・二六は無駄な抵抗はやめろだった。二千二百六十円あたりか。

先月は四千円割れ(17日)を仕手主力が強引に買って下げに歯止めをかけた。

相場はあのラインを、音もなく、材料もなく割った。

テレビニュースで住民が寝ている間に大土地が陥没していた―と無気味な地割れを映していたが、あんなふうである。

新ポから三千円近く棒に下げていることは、相場の流れが三山天井打ちを表明しているわけで、仕手期待感が強いから資生堂ふうにいえば『だからコウナッタ』。

去年は〝晴れた日にGMが見えた〟。今年は〝窓からローマが見える〟。スローなブギにしてくれが、テンポの早いジャズにしてくれ。窓からS安が見えた。

下げてどこまで?それは判らんが底にとどいていない。

片建て買いが三千六百枚とトップに出ている買い店の玉が半分ぐらいに減れば―というモノの見方もある。

いつまでも仕手の時代でない。なにかの広告に〝六本木心中〟とあって、ドキッとした。予感というものは当たるものである。

四月八日満月の日に24日まで崩れると書いた。お月さんと相場である。要するに潮の満ち引き、人気の盛衰である。これが日柄というもの。

とりあえず三千円割れは利食いのマーク。状況次第で二千四百円を取りに行くだろう。なにしろ三山崩れは相場の疲労。

大台割れの二千七百円あたり、下げのトレンドの抵抗がある。しかし〝六本木心中〟だと、すぐ二千円割れに直行する。春天井打ちだからコウナッタ。

富士でいえば六合目。

●編集部註
人間の記憶など、いい加減なものである。
 資生堂のCMで「夏ダカラ、コウナッタ」とくれば、矢沢永吉の「時間よ止まれ」がCMソングだとばかり思っていた。
 調べてみると確かに矢沢永吉が歌っていたが「ラハイナ」という曲だった。「時間よ止まれ」は197 8年のCMソングだ。
 1978年と言えば、芸術家の池田満寿夫が、自身が受賞した芥川賞小説『エーゲ海に捧ぐ』を映画化した年でもある。当時の映画館の入場料金は大人1300円。この作品は興行収入16億円のヒット作品になった。
 この映画の主題歌もヒ ットする。それが、ジュディ・オングの「魅せられて」である。
 このヒットに気を良くして池田が撮った第二弾が『窓からローマが見える』なのだが、この作品は大コケ。つくづく映画制作はギャンブルである。