昭和の風林史(昭和五七年三月二六日掲載分)

決して買える相場でない

先月と同じパターンだ。ストンと落ちる型。落ちてみてハッと気のつく悪さかな。
NHKが金取引のトラブルや香港系ブラックの被害について特集するため取材しているが、新しい取引所が開所したばかりの時に困った事だ。
小豆相場は期近から高い。商いは薄い。市場は強気する人が多い。大手買い方は姿勢を崩していない。
二月の小豆輸入通関は五千三百八十㌧と、去年10月以来毎月五千㌧台が続いている。年間六万㌧の輸入を必要とするだけにコンスタントの入荷といえる。
人はみな強気だがこの相場、落とし穴があるように思えてしょうがない。
取り組みは徐々に増加しているけれど、一部仕手筋の玉である。
全般商いの薄い中で買い方が手を出せばセリは上昇するけれど、付いた値は、なにか頼りない。
これを買い方努力相場というべきか。買い玉の多くは五千円台であるから、決して楽とはいえない。
今の相場、強気する人と、弱気する人と、これは信条の違いであるから、どちらがどうと、いうことはない。要するに各々の信念によるポジションだ。
二月10日の高値で春の相場の天井を打ったと見るのが弱気。三月17日の安値は底でないと見る。
強気は二千円強の下げを押しと見ている。
相場観の違いといえる。
需給は緩まないと信ずるのが強気。ものは売れていないと見るのが弱気。
答は相場が出すから、あわてる必要はない。
先月も17日安値から23日戻り頭まで千円棒を立てた。今月も17日安値から25日ほぼ千円棒の戻り。
トレンドからいえば戻り一杯である。買い方、賽の河原の石積みとちがうか。

●編集部註
 〝嫌儲〟というネットスラングがある。
 儲ける事が出来なかった者たちの妬みややっかみ、嫉妬といえば身も蓋もないのだが、この時の金融市場には関する報道姿勢の一部には社会問題を告発するという名の下に〝嫌儲〟のエキスが一滴か二滴入っていたような気がする。
 相場に罪はない。罪があるのは不正な相場に手を染めた人物である。
 悪貨は良貨を駆逐する。毅然と不正したものを罰し、厳格なルールだけでなく倫理を作る必要がある。日本の先物市場はこれに失敗したのだと思う。