昭和の風林史(昭和五四年十月十七日掲載分)

国際化の波か 香港商取逆上陸で

香港商品取引所の日系ブローカーによる、目本逆上陸は、国際化が叫ばれて以来の事件である。

「満天星の垣の紅葉に散る紅葉 芳静」

十一月一日から香港の商品取引所で、東穀とほぼ同じ方法で輸入大豆の相場を建て、商いをはじめる。

香港商品取引所は開所以来、商い不振におちいり(仔細は『商品先物市場』10月号50頁)、その存在が問われていた。

しかし香港在住日系ブローカー(取引員)有志十数社が、同取引所不振の要因である(1)上場商品、(2)売買仕法、(3)その他を手直しすれば、取引所の運営は軌道に乗り、ひいてはアジアにおける総合取引所としての機能も発揮出来ようということで、東京穀取方式で輸入大豆を単一約定値段による競争売買(ザラバ方式でない)で値付けすることの許可を受けた。しかし現物の受渡し場所は東京の指定倉庫という事で、香港での受渡しは行なわない。

この事で現在、さまざまな問題が懸念されている。大手商社系列の各問屋筋は、香港市場が、日本国内の価格形成と流通に、どのような影響をもたらすのか強い関心を示し、中国の交易会に出席したあと香港にまわって実情を調べるところもある。

また、わが商取業界は、香港取引所のブローカー(主に日系仲買人)が、日本で投機家を勧誘した場合、外務員資格、支店、建玉その他、およそ無制限に行動出来るのか。現行商取法及び主務省規制等の権限外のものであれば、日本の商取業界は、革命的混乱におちいるのではないか。このような、多くの問題を内蔵している。しかし、香港商品取引所の輸入大豆上場は、わが業界にとっては青天の霹靂―というものではない。

日系ブローカーは、およそそのほとんどが日本の商品取引員の系列会社であり、取引所制度改善の実務を担当した人は、東繊取前専務理事、現顧問である。

従って、わが商取業界があたかも〝黒船入港〟のような狼狽の仕方はないはずである。また、商取業界識者は、ここ十年来、口を開けば国際化の必要性を説いてきた。

世界経済激動のいま、規制規制で、がんじがらめにしばられているわが商取界に、香港からの強烈なアプローチがあったとしても、これは自然発生的、必然性によるものとして、商取業界の国内態勢を整備し、低次元における秩序の混乱を招かぬよう国際化の波に乗らなければならないだろう。識者のよく言う激動期の一前兆に過ぎない。

●編集部註
 相場とは関係ないが、先日「サザンオールスターズ1978―1985」という本を読んだ(スージー鈴木著、新潮新書)。 

 78年に「勝手にシンドバット」でデビューした彼らが人気を確立するのがこの年の3月に発表した「いとしのエリー」。この曲で紅白初出場を飾る。