昭和の風林史(昭和五四年十月二日掲載分)

人気強くなる 巧者筋売り場待ち

ホクレン様次第という小豆である。所詮は売られるために高い相場と思っておけば間違いない。

「赤い羽根つけらるる待つ息とめて 青畝」

台風16号は寝ている間に近畿地方を通り抜けて、大きな被害もなかったのは、なによりであった。

十月新ポ。赤い羽根の募金が花やかな声で協力を呼びかけている。長いのを下さい。一番長いのを―。胸のポケットの名刺入れに挾んで、羽根の頭が、ちょっとだけ出るぐらいの長さの羽根は、近頃見当らない。

朝の通勤電車でひともみされたら、消えてしまうのである。

爽やか十月。相場の顔つきを見ると、それほど晴晴しているふうでもない。
昔、こんな歌があったのを思い出した。「お国の為とは言いながら、人の嫌がる軍隊に、召されて行く身の哀れさよ…」と。

相場が少し高いと、「売られる為とは言いながら―」と、歌詞を置きかえてみたくなる。

ある取引員会社の慰安旅行に御招待を受けた事がある。宴会になって部別、支店別の歌謡大会で、女子社員が、替え歌で、支店営業マンの悲哀を合唱した。
彼女たちは、新規の難かしさも、追証の苦しさも、そして第一線セールスの苦闘も、あんな可愛らしい顔をしていて、ちゃんと心得ているのだな―と思った。

小生は、その替え歌の文句が実にうまく出来ているので、お膳の箸袋をひろげてメモしておいたのだが、そのメモはどこかにまぎれこんでいる。

小豆は、もう少し買われてもよい感じである。

もう少しというと、二万五千円近辺。
ないかもしれないが、あるかもしれないという、面白いところである。
市場人気は、やや底入れ感でもある。
だが、その気になると、すぐストトンとくる。
◇…ないかもしれない、あるかもしれない。あればあったでよし、なければないでよし。
などと言っていたら強弱にもならなければ、商売にもならない。

ホクレン次第とでも言おうか。ホクレンが買えば締るが、高ければ売ってくる。市場はホクレンの制空権下にあるため、投機家には活動の余地がない。

目先的には次期ワクにからみ、瞬間高みたいなこともあろうし、線型も買いを示している。

しかし、所詮は、〝売られるための高値〟である。

1年12カ月のうち買いはせいぜい2カ月。あとの十(と)月は売って暮せ―という歌がある。

●編集部註
 どの時代にもCMから流行に火がついた曲が少なからず存在する。

 この年の10月1日に、久保田早紀が歌う『異邦人』が発売され、その2週間後にこの曲が採用されたCMがお茶の間に流れ一躍話題になる。更にその2カ月後、売り上げが100万枚を突破する。