昭和の風林史(昭和五十年六月五日掲載分)

続落の場面へ もとの木阿弥だ

気がつけば山川草木うたたピーばかりという事になろう。完全に天井した手亡だ。続落の運命。

「まひまひや菖蒲に浅き水車尻 蛇笏」

小豆と手亡。手亡の期近と長期限月。市場別の手亡―という具合に、てんでばらばら、君は君、われはわれという動きを見ていると、どこに相場の芯があって台風の目玉がどちらに向かおうとしているのか掴み難くなる。

手亡の買い主力は静岡筋とカネツ貿という二眼レフ。片や売り方は期近限月買いの長期限月売りという布陣。

そして名にしおう静岡筋の〝栗田ファミリー〟の玉と大衆のちょうちん。

しかし、荒れている相場も遠くから冷静に眺めておれば自ら行くべき道が判ろうというもの。

手亡の仕手相場は天井していること。

そして加工の大相場の末期(天井圏)に見られる典型的な逆襲巻き返し線が出ていること。

日足線型も大暴落型で押したり戻したりしながら続落する。

人気面は仕手筋に期待をつなぐ買いと、先行きの天候相場に勝負を決しようとする強気。

逆に、この高値を売っておかなければピービーンズ輸入圧迫で結局は、もとの木阿弥になると見る弱気。

いうなら混戦である。

筆者は九月限、十月限で一万一千円→二千円→三千円と大台を三ツ替わってS高四発の〝五空飛び放れ〟相場をしてきただけに、下げの〝大台三ツ替わり〟即ち九、十月限で三千円→二千円→千円割れの行ってこい相場だと思う。

一部に半値押し地点(大阪10月限一万二千円地点)で反騰態勢に移り、第二ラウンドを期待する向きもあるが、上げ方が急な鋭角(87度)だけに相場上昇エネルギーの燃焼は早く、〝五空打ち上げ〟のロケットは、すでに燃えがらである。

明らかに、ひと相場を終わった―と見るべきでなかろうか。

先に行って判る事と思うが、戦い済んで気がつけば山川草木うたたピービーンズばかりということになりはしないか。

思えば一局の相場だった。これからは戻しては崩れ戻しては崩れていこう。

思い出したように買い方の逆襲もあろうが、すでに大勢は決している。

戦い済んで日が暮れるまでにはまだ時間があるが明るいうちに売っておく。

 ●編集部註
 この当時はどうであったのかはわからないが、風林火山が執筆しているフロアには、終日クラシック音楽が鳴り響いていた

 まるでワーグナーのワルキューレの騎行が聴こえてきそうな文章である。

 なおこの曲が印象的に使われた「地獄の黙示録」は昭和五四年公開である。

【昭和五十年六月四日小豆十一月限大阪二万〇五〇〇円・六七〇円高/東京二万〇四二〇円・五一〇円高】