昭和の風林史(昭和五十年五月二四日掲載分)

しんどい手亡 戻りに元気ない

値の動きは小豆と手亡とでは、まったく違ってきた。手亡はしんどい。六月大崩しの宿命にある。

「夜の色に沈みゆくなり大牡丹 素十」

天候不順で小豆が買われるのであれば、手亡も買われるだろうと思うのが常識である。

しかし、今年の場合、小豆が高ければ手亡も追随高するわけにはいかない。

手亡相場が、手亡相場であるならば、それは別だがピービーンズ十万俵の圧迫は、どこまでもついて回るだろう。

しかも手亡相場が高ければ、来期ワク分でピービーンズの輸入作業が進行する。

ピービーンズの供用格差を拡大しても海外市況が低迷すれば、輸入の採算は充分に合うし、まして手亡相場が買われれば、海外市場が高騰しない限り、ピービーンズは輸入され、定期に機械的につながれる。

本年十月末の手亡の繰り返し在庫は二十五万俵と予想されている。

仮りに今年の手亡の作付けが抑えられても最低三十万俵の収穫はあるだろうと予測される。

そして十万俵のピービーンズがタライ回しされて行く。

合計六十五万俵の上に新穀のピービーンズが輸入されて上積みされれば、これはもう相場にならない。

市場人気は①天候相場に入る②手亡の作付け面積大幅減反③ピービーンズ十万俵というが案外少ないのではないか④有力な買い仕手が介入している④安値で大衆が売り込んだ⑥日柄の面で下げの限界が来ているなど、かなり強気がふえている。

しかし相場つきをみていると、小豆と手亡の動きを比較すれば一層判然とするが、手亡はいかにも〝しんどい〟。

もし、月末から新ポにかけて手亡相場が買われるとすれば、本間宗久伝の六月崩し見ようの事で、来月に入っての手亡は惨落の憂目を見よう。

三千円→二千円→千円と大台を三ツ割って千円戻し。

強気する人は、せめて一万二千円まで戻すだろうと期待しているが、とてもそのような相場環境でない。

ともかく、手亡は千円戻しのあと、再び大台三ツ替わり、即ち一万一千円→一万円大々台→九千円のラインを割る宿命にある。

相場はきっかけである。勝者の戦いは積水を千仭の谷に落とすが如き型なり。

手亡崩しのキッカケが接近している。

 ●編集部注
 積水を千仭の谷に―という語句は孫子の兵法にある。積水グループの社名もここから来ている。

【昭和五十年五月二三日小豆十月限大阪一万七五八〇円・二〇円安/東京一万七五一〇円・八〇円安】