昭和の風林史(昭和五十年五月二日掲載分)

顔ぶれ揃わず まだ時間かかる

期待はされても、まだ小豆相場にぬくもりがない。強気にウェイトを老いた逆張りか。

「霧なくて曇る八十八夜かな 子規」

現在の手亡相場は①自律戻しが入るだろうが②戻りは売られ③大勢的には安値に陥没する運命―という見方が支配している。

それでは小豆相場はどうか。①まだ買い方の顔ぶれが揃わない②手亡の下げで大衆投機層が痛んだ③しかし相場そのものとしては最悪一万六千五百円までのもの④これから作付け動向と⑤春耕遅れや遅霜が相場を刺激するし⑥産地の小豆供給量も四月以降百三十万俵という軽い数字になった。従って必ず小豆に人気が集中する時期がくる。

昭和48年の十勝の小豆生産コストは反当たり一万七千百四十六円だった。これが49年は前年比三割アップの二万三千円になっている。

ちなみに農業パリティ指数は48年二六〇。49年三二八。50年三四九(予測)と上昇している。小豆の生産コストが仮りに前年度より二割アップとしても反当たり二万八千円となる。

50年度小豆は生産費、輸送コスト等の上昇に伴って、当然値上がりする運命にあるわけだ。

いまのところまだ小豆の相場に〝ぬくもり〟は感じられないが、おいおい不順な天候が材料視されてくると思う。

本間宗久伝に『五月中旬より六月中の相場は、急に引き上げる時、また急に引き下がるものなり。急に下げる時は、上も同断』とある。去年の小豆相場がそれだった。

ここのところは強気にウェイトを置いた逆張りという場面かもしれない。

相場そのものが〝しらけ〟ているせいか、どうも原稿を書くにしても講演会を頼まれても小豆の強弱にパンチが利かない。

その点、やはり取り組みの大きい手亡は原稿になる。

これは新規仕掛ける場合でも言える事ではなかろうか。

手亡は日足線〝鮎の友釣り〟を月末には〝叩き込み包み大陰線〟でかぶせた。いうなら〝陰の陰〟である。本間宗久伝に『人も相場も我れも弱きとき気を転じるべし』とある。この思い切り海中に飛び入る心持ちにして甚だ悪きものなれど―と説明している。

手亡は、だいたいとどいた感じがするから反発を待つところで強力な反発があればまた売り場になる。

●編集部注
天災と相場の節目は忘れ厭いた頃にやって来る。

パンチが利かない時こそ実は要注意なのだ。

【昭和五十年五月一日小豆十月限大阪一万七一七〇円/東京一万七一四〇円】