昭和の風林史(昭和五十年三月七日掲載分)

時間かかるが 減反買う相場だ

手亡はピービーンズ相場で魅力を失った。大衆は徐々に見限っていくだろう。小豆も時間がかかる。

「一人静二人静も裏山に かな女」

手亡相場は春の嵐のようなピービーンズ成約で崩れた。

相場的には数年前、小豆相場が中国小豆にふりまわされた時のような印象を受ける。

成約ピービーンズ約五千㌧。定期の枚数にして二千枚。

投機人気が盛り上がっている時なら、なんという事もない数量であるが、強力な買い方仕手も存在せず、萌えるような市場人気もない現在、輸入商社が手亡相場の制空権を握り、手亡相場ではなくピービーンズ相場となる。

しばらくは、輸入商社や現物背景の売り型の支配下に置かれる相場だけに、情勢が大きく変化するまで、手亡相場に妙味はない。

それでは、小豆相場に期待をしてもよいかということになる。

小豆の本年産北海道の作付け面積は道農務部あたりの予想によると前年の六万一千ヘクタールを大幅に割り込み、四万三千ヘクタール見当という大減反である。

中間地帯の、稲作から小豆の畠に転換したところが連作によって土壌が限界にきていることや、小豆の価格が他作物に比較して低いため生産の魅力をなくし、かつての大場所帯広を上回る大場所に、のしあがった中間地帯が、本年あたり目だって落ち込む傾向にある。

このため再び十勝平野が小豆の主産地に返り咲くわけだが全道予想四万三千ヘクタールは、反収二俵として八十六万俵。冷害、凶作に見舞われると六十万俵収穫という昭和41年、四十五万俵収穫だった39年の再現なしとしない不安がつきまとう。

このような収穫不安定な小豆だけに、その相場も、きわめて投機的であり先物市場での人気を集めてきたわけだが、いまや小豆相場は、かつての華やかなりしころの面影はない。真に小豆相場ファンにとっては淋しい事である。

だが、本年の大幅減反は来年の減反にもつながるわけで、小豆生産者が敢て手持ち現物を売り急がないのも、本年こそ小豆価格が大革命する年である事を本能的に察知しているからであると思う。

時は春。万物陽発する季節。焦らずに時期の来るのを待つ。

●編集部注
既に我々はこの時の相場動向を知っているので、この当時に、小豆相場を手掛ける人の身になって考えてみようと思う。

それまでは長い保合いが続いたので、買い方にとっては、少なくともこの値位置付近が潜在的な鬼門になっている。売り方は勝負どころだろう。

【昭和五十年三月六日小豆八月限大阪一万七三一〇円・八〇円高/東京一万七三八〇円・一三〇円高】