昭和の風林史 (昭和四九年七月十五日掲載分)

―今週は小豆艦隊いよいよ出動―

天井打たず底打たず 煙も見えず雲もなし

アカシヤの雨に打たれて畠が冷えている。今週は、きっと小豆艦隊も出動しよう。

「夏川の砂さだめなき流れ筋 蛇笏」

異常低温注意報が出るぐらいだから、まさしく冷夏である。二分作が言われる手亡の相場が敏感である。手亡は押し目をS安一発カチ込んでおいて、返す刀で新値を買った。

市場では面白がって、今年の手亡は種だけしか収穫出来ない―という。収穫予定十五万俵だ、いや十万俵しかない―などと。

ことほど左様に手亡は手お陰と雨で壊滅的打撃を受けている。

仮りに手亡が二分作とか三分作なら、その相場は小豆を上抜こう。小豆と手亡が同ザヤから、手亡上ザヤに変わる時点をゴールデン・クロスという。黄金のクロスである。

なぜならば、手亡に抜かれた小豆は必ず発奮して、猛然と拍車をかけて追い込むからだ。

しかし、結局は手亡の規制強化、立会い停止、張り付け天井、溶け合い、上場廃止という場面が待っているような気もする。

手亡には、さまざまなドラマがあった。あれは六年前(昭和43年)三月納会(27日)、東京穀物取引所は鶴見の松尾組にふりまわされて前場一節から手亡相場の立ち合いが出来ず、後場三節、やっと話しあいがついて〝夕方の納会〟という輝かしき実績がある。

さて、ぼつぼつ小豆艦隊の出撃である。

手亡が追い上げているときに、小豆がじっとしておるわけにはいかない。

一般的に言えば小豆は逆張りという見方が支配しているけれど、待ち時間が長ければ長いほど、噴いた時の勢いはすさまじい。

田中内閣がゴタゴタしている間隙を縫って、閃光一瞬二万円乗せ。

もう待てないという風情(ふぜい)だ。

いまの小豆は天井打たず底打たず、煙も見えず雲もなし―だ。

不作年の小豆は七月に天井しないというジンクスがある。七月に天井しない相場は九月に天井する。

九月は相場師好みの二日新ポだ。きっと大天井するだろうと今から手ぐすねひいて大暴落を期待している人も多いが、今の時点ではまだ早い。今は、アカシヤの雨に打たれて、このまま死んでしまいたい、夜が明ける、日が昇る、朝の光をその中で冷たくなった畠を見つけて、あの人は、きっと儲けるだろう。

●編集部注
西田佐知子が唄う「アカシアの雨がやむとき」を知る人が今どれだけいるのか。この当時で発売から十四年経過している。 

背後に敗北をまとった切なく悲しい曲である。

【昭和四九年七月十三日小豆十二月限大阪一万八九八〇円・一二〇円高/東京一万八九五〇円・一五〇円高】