昭和の風林史 (昭和四九年七月二日掲載分)

マリファナの幻覚症状が必要

新穀小豆は早晩二万円をつけるという信念さえ持てば安いところはマリファナ無しでも買えよう。

「人知れず暮るる軒端の釣忍 草城」

帯広地方快晴、気温23度と天候が回復して新ポの小豆、手亡相場は乱調だ。

十勝平野のお天気は、水、木曜の三、四日に気圧の谷が通り過ぎるため崩れるが、五日の金曜日は快晴。そしてまた六日土曜に崩れる。

この間、西北西に進路をとっている台風八号が、帯広上空の天候に、どのような影響を与えるかという事も、穀物の投機家はいまから考えて、その時の相場を予測する。

下げた小豆の相場を眺めて新穀の八千円割れは買い場という見方が支配したが、すぐ反発した。ただし、古品限月(10月限まで)は、北海道の天候さえ悪くなければ当然低迷するのであることは誰しも認めるところだ。

外割り発券という問題がついて回る。実需不振も尾を引いている。

十一月限が二千二百円強を騰げたにもかかわらず、この間、旧穀限月は千六百円ほどしか反騰しなかったところに人気(新穀)と実勢(旧穀)のギャップを見る思いがした。

市場の投機家は今後の相場について深い迷いを持っている。

新穀の二万円時代は、天候が悪ければ早晩実現するであろう。しかし、二万円が二万三千円→五千円と、人気の花が咲くだろうか。

なんとなく本年の穀物市場が、今までに経験してきた天候相場と異質なものであることを感じる。

どこがどう違うか。価格水準が高い位置にあるため、仮りに今後の作柄が悪くても、付ける上値が未踏の地であること。

いうならば手さぐりの新世界である。

46年十月に二万一千三百六十円(東京)という値段は付けたが、それは仕手策動の瞬間的高値であった。

われわれも含めて今の市場が考えている事は、二万円台の小豆をエキサイトせずに受けつけているかどうかという事で、未踏の価格世界には、なにが飛び出してくるか判らないという警戒心がある。

思うに投機行為にはマリファナ的幻覚症状を必要とする。特に天災期は精神面の狂乱状況を維持しなければならない。ところが今の市場はあまりにも冷静である。誰かが狂いだすのを待っている格好だ。

●編集部註
 言文一致ならぬ〝罫文一致〟の流れである。

 相場の狂気は高値切り上がり、安値切り下がりの線形となって罫線用紙の上に現れる。平成二八年四月以降のNY金相場と同じような格好である。

【昭和四九年七月一日小豆十二月限大阪一万八六一〇円/東京一万八六〇〇円】