昭和の風林史(昭和四八年十月二三日掲載分)

人気化しない 釈然とせぬから

商品全般から見ると小豆相場に、もうひとつ人気がない。釈然としないものがいつもあるからだ。

「秋ふかし枯木にまじる鹿の脚 青々」

商品相場のなかで最も人気のある銘柄は砂糖である。次いでゴムの相場が素直さという点で、やりやすいようだ。砂糖は山佐商事とカネツ貿易があてた。お客さんは砂糖相場で大儲けしたそうである。自然、商い高も増大し、玉が回転するから手数料収入も大きくなる。

やはりお客さんが当たらなければ駄目である。

昔は、お客が当たると店が食われると言った。しかし今の時代、そういうシステムの店は、ほとんどない。

どこの取引員も、お客さんに儲けてもらおうと相場判断、相場分析、情報解説には最大の努力をはらっている。

砂糖に次いでゴムの相場であるが、証拠金がもう少し安いと商いは、さらに増えるのだが―と言う。

砂糖にしろゴムにしろ、国際商品として、相場の動き方が一部特定の仕手筋によって操作が出来ないところに人気の秘密があるようだ。

山佐商事の佐伯義明社長は『小豆の相場は魅力を失いつつある。材料を材料として受け付けないところに割り切れぬものをつねに含んでいる。小豆相場のファンも、だんだん興醒めしてくるだろう。早い話が大手亡相場の不人気が、いい例だ。手亡は一部特定のクロウト中のクロウトが限定された場所で操作しているように受けとられるのがマイナスになっている。相場情報にしても〝操作情報〟を得られる限られた人たちのもので、まったく一般的でない』―。

見ていると小豆相場は、この春の騰げ相場のときに見られた〝買っているあいだが高い〟―値付きである。有力筋が買えばワッとちょうちんがつくが、手を出さないと商いがすぐに細ってしまう。閑な市場でいかにも強力な買い手口を見せ、売りハナにして値を吊り上げておいて、あけてしまう。実際は、それほど買っていない。

巧妙な駈け引きである。

そういう事が誰の目にも見えすいてくると小豆相場の魅力が薄れ、敬遠する人が多くなる。

相場が高いのは高い理由があって高いのであるが、その高い理由が釈然としないものを含んでいては人気化することは難しいであろう。

●編集部注
 市場経済研究所がこの夏に出版した『人生は挑戦と見切り―細金雅章自伝―』の中に、この時のゴム相場が登場する。
 当時、赤字続きであった小林洋行が乾坤一擲、社を挙げてゴム買いに挑戦して大勝利を収める。

【昭和四八年十月二二日小豆三月限大阪一万三九五〇円・一一〇円安/東京一万三八七〇円・一七〇円安】