昭和の風林史(昭和四八年十二月十三日掲載分)

儲けは〝懐ろ〟へ 収穫の発表待ちへ

暴走する前に歯止めをかけるのはよい。小豆はしばらく農林省の収穫発表待ちでお茶を濁すところか。

強烈なインフレ時代においてはいかなる尺度も色あせ、お金の減価速度に沿って、その価値を落としていくものらしい。

バカ正直に食糧配給を守った人は飢え、数十年前こつこつ貯めた人は窮乏する。大企業は庶民から吸い上げたお金を借りてまるまると太り、その負債をいとも気軽に返済する。ワイロの手を知っているものは、なんの不便も感じず、優雅な生活である。

にわか成金は〝先見の明〟をたたえられ、その陰で物価高に悲鳴をあげるものが数知れない。

インフレはあらゆる矛盾を生み、社会不安は遂に暴動へとつながる。

これは〝米騒動〟など過去の歴史が証明するところである。

政府もその場かぎりの糊塗策gは通用しないと悟った(?)のか、公定歩合の引き上げ方針をはじめ、相当思い切った手を打ち始めようとしているようだ。

主務省の商取界への姿勢もいよいよ厳しく過酷なものになりつつある。

砂糖ついで綿糸、スフ糸―。ゴムにも強力規制、委託者の手口報告―。

〝投機家がインフレをもたらす〟―という発想法はあまりにも馬鹿げているが、今それをいってもセンない話である。

海千山千のやり手ばばあ―というが、さすがわが穀物業界は、その点、非常事態には甚だ馴れたものである。

強制されるのはみっともない―と、賢い仕手は撤退し、全穀連も常務会、続いて「全国理事長会議」(十七日)で、市場管理対策要綱なるものを決める予定である。

ヘッジの対象が証券から商品へ―という世の中の流れを無視できないものの、これで暴走の〝歯止め〟になれば言うことはない。

小豆相場の方は、十一日の全商品の暴落というあおりを受けた格好で、ひと息を入れている。
高値をつければ規制強化が気にかかるし、「一万六千円以上は産地の売り目標」の声を聞けば、ひとまず利食いの金は懐ろに入れる―という気持に傾くのも当然か。

いずれインフレの高進は生産費の大幅アップ―などの材料にされることだろうが、今は政府の物価対策に協力―という体面を保つ必要がある。
しばらく農林省の最終推定実収高がどうのこうのでお茶を濁すのも悪くはない。

 ●編集部注
 プロは売りが好きだ。

 その売り方のぼやきと見て読むと面白い。

 この頃は、まだ手口が公開されていた。良くも悪くも牧歌的な時代だ。

【昭和四八年十二月十二日小豆五月限大阪一万五五八〇円・一四〇円安/東京一万五五九〇円・一〇〇円安】