世相反映して 相場も不透明に
世相は、ますます険しい。大投機時代の反動が商品相場のどこかに兆候として現れたら恐慌だ。
「九州へ師走の旅の一走 羊多楼」
博多のゼネラルの真玉社長が大阪砂糖の会員の許可が下りたそうで来阪。それはお目出とうということで一杯やることにした。会員になっても、砂糖の取引所が今のような状態では、前途多難である。そうこうしているところへ下関のナカトラの中島社長から連絡があって、一緒に麦酒を飲むことになった。
筆者は21、22日と博多と下関に出張する。来る人あれば行く人ありで皆さん多忙だ。
ナカトラの中島氏が北海道から下関まで15㌧トラックで正月用の黒豆などを運んだ時、なんとトラックの運賃が三十四万円、日数にして六日ほどかかったそうだ。
東北、北陸地方の物流は非情に悪くなっているそうで、スノー・タイヤ不足、不凍液不足、燃料不足などからトラックはものの用をなさないという。
品不足は、そのようなものまで―とびっくりするところに波及している。関西では醤油が完全に姿を消してしまった。
新聞やテレビは、人心を刺激しないよう、極力抑えた報道の姿勢に変わっているが、現実に醤油を買いに行って、どこにも醤油がなかった時のショックは、言いしれぬほど大きい。しかもメリケン粉もソースもケチャップもマヨネーズもバターも無い無いと騒ぎが大きい。こんな事では正月の休みのあいだ、いったいどのようなことになるのか恐ろしくなる。
政府筋、あるいは治安当局は暴動発生について真剣に憂慮していると聞く。関西で最も危険な地区が千里ニュータウンだそうだ。まったく寒けがしてくる話だ。
庶民は物価高と品不足による家庭経済の破局。資産家はインフレとデノミに恐恐としている。
この時、どうしたらよいのか、誰にも判らない。来年の経済界の見通しは、どのような企業でも掴みかねている。判る事は各企業の操短、失業者増、金詰まり、人心不安定、乱れた治安、集団強盗続発である。
誰の顔も〝俺たちにあすがない〟という映画の題名みたいな顔つきになってきた。世相判断即相場判断と思えばよい。
●編集部注
千里ニュータウンこそ後年昭和史に語り継がれる「トイレットペーパー騒動」が起きた現場だ。
この時、商品高を煽ったり、商品先物の買いで儲けた人がポロッと市井でその事を吐露すると、きっと記事で登場した映画のラストでの主人公達のように蜂の巣にされかねなかったのであろう。
【昭和四八年十二月二十日小豆五月限大阪一万五九五〇円・一七〇円高/東京一万六〇〇〇円・二三〇円高】