売れば逆襲高 買えば利食い売り
売り込んだと見れば強烈買いの集中砲火をあびせてくる。鳥なき里の蝙蝠。買い方の天下。
「山茶花の散るにまかせて晴れ渡り 龍男」
売り方にあすはない―ような市場の空気であったが、十一月新ポの買い方強烈買いが目先的に力を出し尽くした格好になって久しぶりに押し目が入った。
買い方陣栄は、あくまで強気で五日の在庫発表は、現物が指定倉庫意外に分散保管されているため、発表数字は大幅に減るだろう、従って人気面に刺激を与えれば、強烈高は必死という読みである。
以前の穀物市場であれば十一月一日、二日のような小豆相場は完全な戻り天井型で、成り行き売りでよかった。
しかし、今は強力な買い仕手が存在しているため、ひと場で相場の地合いを変えることが出来る。
商いが細ったところへ二百枚カイ、三百枚カイと手をふれば、カイハナ変じて三、五百枚のウリハナとなり値は見る見るうちに四、五百円高となる。適当ところでハナを落とせばS高だろうと、S高一文手前だろうと値は付け放題である。
売り方は追い証に攻められ踏まざるを得ない。踏み玉に向かって買い玉は利食いしてくる。
本年四月から五月、六月にかけての棒上げ小豆の時と、同じパターンである。そして、先限、先限と集中買いすれば、サヤはぐんぐん拡大し、ヘッジ玉だろうが投機思惑の売りだろうと、巨大なショベルカーで掘りあげ、ブルドーザーが地ならししてしまうため、一木一草生存の余地がない。
うかつに売れない―という市場人気になってしまうのも当然で、買い方に提灯(ちょうちん)をつけておれば、よろしいではないか―となる。
こういう繰り返しを苦々しく思っている人も多いし、馬鹿らしくて小豆など出来ないと、他商品に関心を求めていく人もあるが、いや儲かればよいのだと権勢並ぶものなき買い方に迎合し、相場情報でなく操作情報の切れ端でももらってもうけようとする人も多いのだ。
思えば先限引き継ぎ線で七月13日天井から九月11日十五夜底までの下げ幅八千八百円強の半値以上を軽く戻した相場の異常さを強力仕手の介入という事だけで片付けられないものを認めるが、買い方陣営になんらかの変化のない限りパターンは崩れないだろう。
●編集部注
うかつに売れないと、怖くて買えないは同義だ。 そして買えない相場は強いという、あきらめて、腹を括って買うと、今度は梯子を外される。
狂乱物価時代であろうとこの流れは変わらない。
【昭和四八年十一月二日小豆四月限大阪一万五五一〇円・二〇円安/東京一万五三九〇円・五〇円高】