昭和の風林史(昭和四八年十一月二十一日掲載分)

呪いの火焔だ 第三次狂騰場面

インフレ買い第三波の焔は天を焦がす。国民の田中政治に対する呪いである。各市場狂騰。

「寄せ鍋や打ち込みし妓のうす情 草城」

小豆は乱調子になった。

下げる。すぐに反撃する。

なんとしてでも新値に買い切ってしまおうという、むき出しの勘定が手にとるように伝わってくる。

精糖がS高。毛糸も生糸もS高。ついでに手亡も持っていけとS高に放り上げた。手亡は商いが細い。うっかり仕掛けると逃げられないという不安が付きまとう。人気離散の相場が持つ宿命だ。

手亡の気配が、ダレてくると、この薄商いの手亡相場でゆるんだボルトを締め直す。手亡は人気陽動の小道具に過ぎない。

高値で買い玉を広げた強気筋は農林省の警告が出る前に格好をつけておこうという焦りがある。国会が始まる前にこの戦いは終わっておきたい。

信濃路に雪が降るからではない。焦燥心理である。

混乱尾世相に物価は体系も秩序も破壊された。

無いはずのない砂糖、そしてトイレット・ペーパーが市場から姿を消し、その姿を見た時には倍にも値上がりしていたという混乱。

小豆買いの心理も同様の焦燥心理の爆発である。

そして火に油をそそぐが如く国鉄のストライキは、物の流通をさらに深刻なものにする。

この時、投機家群は手に手に松明(たいまつ)を持ち物という物に火をつけていく。

物価高騰は国民の田中政治に対する不満の狼煙(のろし)であり、天を焦がす呪いである。

しかし物価革命の火は大きくなればなるほど消化対策も大規模になろう。

大衆はスーパーに行列した如く先物市場で買い急ぐかもしれないが物価と相場は別のものである。

小豆は天井圏内での大波乱の運動を開始したと見る。

この夏、六月から七月にかけて小豆は一万八千円と九千円の間で、大波乱を演じたあ。

市場総強気。二万円突破必至の緊迫した空気だった。

だが、相場はだんご型の天井を形成して崩壊した。

小豆相場のインフレ第三波買いも終わりに近いように思う。

買い方を満載した幌馬車は沈む夕日に向かって急ぐのであった。

●編集部注
 鈴木敏文が、米国のセブン-イレブンとライセンス契約したのがこの頃。

 翌年5月、江東区豊洲に一号店がOPENする。

 一方、ファミリーマートの一号店OPENは四八年九月。埼玉県狭山市に誕生している。

【昭和四八年十一月二十日小豆四月限大阪一万六〇六〇円・七〇〇円高/東京一万六〇一〇円・七〇〇円高】