昭和の風林史(昭和四九年十月三十一日掲載分)

未来の概念で 小豆を強気する

先物市場は必ずしも商品そのものの売買ではなく未来の概念の売買である。

「照葉して名もなき草のあはれなる 風生」

NYタイムス紙が伝えたサウジアラビアが近く石油価格を10%以内で引き下げられようというニュースは近年にない朗報であった。

株式市場も商品市場も好感した。

石油なんていうものは、地下にあっては、なんの値打ちもないもので、採掘してこそ価値が出る。

しかし幾ら価値があろうと売れなければ値段を下げるしかない。

中東産油諸国が石油価格を軒並み引き下げてくるかどうか大きな関心事である。

世の中、満つれば欠けるし、欠ければまた満つる。

悪い悪いの毛糸相場も、陰の極に達したあとは陽転するしかない。

ときおろで小豆相場であるが、農林省筋でも、今の小豆価格は安過ぎると言うぐらいである。

大納言小豆が二万五千円もしている時に一万六千円の小豆は、生産者泣かせだ。

商品先物市場は、必ずしも商品そのものではなく〝未来の概念〟の売買である。

だから小豆という商品の現在の需要供給も考慮はされるが、それ以上に、無限大に発展する未来の概念がそこでは売買されているのだ。

未来の概念の中にはホクレンのタナ上げ、50年産の作付け大幅減少、今後ますます悪化する世界の気象。食糧の国内自給等が含まれている。

また、総供給小豆二百七十万俵。需要減退により供給過剰→価格低落という予測も未来の概念の売買対象材料である。

ただ、われわれは、いまの相場が、非常に悪い環境下にもかかわらず、一定の価格圏を維持している事から、経験的に、下げ予知がないと判断する。

しかも、市場内部要因は日柄七十余日にわたる整理と値幅五千円(12月限)による整理が強要された結果の現在の相場を凝視するのである。

売れなければ値を下げるのは資本主義経済の原型であるが、値段を下げるわけにはいかないところまでくれば、生産制限、大量タナ上げという方法で価格を維持するのが現在の経済システムである。

小豆相場は、どのような角度から見ても明らかに二番底圏にある。

●編集部注
昭和五一年五月、芥川賞作家中上健次による短編集「蛇淫」が発表される。

同年十月二三日、この表題作が長谷川和彦監督、水谷豊主演で「青春の殺人者」という映画になる。

そしてこの物語は、昭和四九年十月三十日に千葉県市原市で発生した、実の息子による両親殺人がベースになっている。

【昭和四九年十月三十日小豆三月限大阪一万六二九〇円・三三〇円高/東京一万六四〇〇円・三〇〇円高】