昭和の風林史(昭和四九年十月一日掲載分)

鮮烈なる反撃 大底脱出の場面

小豆相場には底が入った。底入れした相場は悪材料が好材料に転嫁する。目の覚める反騰あり。

「十六夜や朱椀に澄みし豆腐汁 古郷」

なにも言うことのないところまで相場は来ているから、陰の極であり、悪材料出尽くしである。

そして、さらに申せば、整理完了。日柄充分ということになる。

瞬間的にも真空状態が感じられた小豆相場だった。

こういう現象を過ぎたあとの相場は、自律反騰に転ずる。

これは理屈ではない。

相場とは、そういうものである。

底が入ったのだ。底が入った相場は叩けども、どれほど売ろうとも、びくともしない。

悪材料変じて好材料となるもので相場は理外の理の動きをする。

当面、出荷調整という生産者団体の防衛手段が相場に強力な刺激を与え、効果を見せるだろう。

需要の伸びも見逃せない現象だ。値ごろが安ければ売れ行きも伸びる。

在庫は豊富であるが新穀の出荷が抑えられれば有りがすれという現象も生まれる。

そして、後から響いてくる材料として百六十一万俵の絵に書いた収穫予想がある。鎌入れ不足という問題が表面に出てこよう。

百六十一万俵は、その時の相場の上では信じても、相場が安くなれば、信じられない数字に変わってくるものである。

きょう生まれる三月限は、これが期近に回る時分には、先の方に昭和50年の天災期限月が建っている。

ところがこの昭和50年の天災期限月には作付け面積五万ヘクタール以下という強烈な材料がついているし、零のつく年の大冷害・大凶作という魔の周期に当てはまる年だけに早くから投機思惑の対象になるだろう。

先物市場の投機には遠い先の現象を大づかみに掴んで方針をたてるものだ。

いま仮りに、在庫量と新穀生産量と輸入量とを合計して、年間予想需要をそこから差し引いて、来年の秋には七十万俵の繰り越しになるから相場は売りだ―と本気で考える人は恐らく一人もいまい。弱気しているため口ではそういうかも知れぬが、初心者に小豆相場の説明をする時ぐらいしか役にたたない算術だ。
だから相場は面白い。

●編集部註
日足罫線上では変則的なアイランドリバーサルボトム。ヒゲではなく、実線を分析の中心におくと離れ小島に見える。

ただ相場は十月七日、今度は日足にアイランドリバーサルトップが出現。 

大きく動いた分、取引参加者のおっかなびっくりが稀な足を生み出す。

【昭和四九年九月三十日小豆二月限大阪一万五九〇〇円・一七〇円高/東京一万六〇五〇円・二九〇円高】