昭和の風林史(昭和四九年八月十四日掲載分)

運は天にあり 霜一発で凶作も

台風、秋雨前線の居座り、早冷、降霜、病虫害などこれからの材料。二万円絶望はまだ早い。

「あをあをと盆会の虫のうす翅かな 蛇笏」

強気しても、もうひとつだし、弱気してももうひとつの相場を眺め、人々はジリジリした気持ちになる。

天候相場も、ここまで来たという感懐もあるが、八月末から九月中旬の早冷、長雨、早霜の懸念も残っている。

大きく見て八千円と九千円の圏内での一高一低という小豆相場であるが、二万円の壁は厚く、同時に昨年の悲惨をきわめた暴落が悪夢のようによみがえってくるのだ。

出来秋は安い。これは小豆の常識である。

当初予想されたほど作柄も悪くないようだ。消費地にも産地にも在庫は充分にある。

買って駄目なら売ってみようか―となるのも自然の成り行きであろう。

ここに来て手亡相場の姿がよくない。海外安や輸入不安などで投げる玉が薄商いの市場で、はまらない。しかしこれも、収穫三十万俵予想だけに、下げたあとは再び買われる。

ひとまず下げ地点、先限の七千四百円以下は、買い場になるだろう。

手亡が場味(あじ)を悪くしているため、小豆も冴えないが人気が弱くなる事は、言うまでもなく先行きの相場に期待を持たせる。

玄人筋は去年の後遺症がまだ残っている。

盆が来れば来たで当時の苦しさを思い出す。

即ち大暴落におびえているのだ。

しかし昨年と根本的に事情も環境も違う。

昨年は豊作を無視してインフレ買いの波に乗り大型仕手が強引に買い進み、規制でガンジがらめになっていた。

今年は熱狂するところがない。日柄では昨年九月11日から十カ月を過ぎた上げ相場と読み込むけれど、この間に世相物価は革命的に変化してきている。

昨年九月から本年一月までの七千円強を上げた石油危機相場。これを一段上げ。二月四日から七月26日までの五千五百円上げは異常気象下の天候相場。

そして、ここで、どれだけ押すかという場面。人気を弱くし、玉整理を済ませたあと現実の不作相場展開となろう。後遺症なき者は信念で強気するところ。

●編集部注
昭和四九年のこの時期も不穏な事件は起こっている。韓国では今の大統領の実父、朴正煕大統領狙撃事件が。彼はその後何度も命を狙われる。

日本では俳優津川雅彦の長女が誘拐された。犯人はその翌日逮捕される。

【昭和四九年八月十三日小豆一月限大阪一万八六二〇円・一二〇円高/東京一万八六〇〇円・一〇〇円高】