昭和の風林史(昭和四九年八月二十八日掲載分)

投げが投げを 呼んで崩壊せり

小豆各限は絞首台の踏み板が落ちたように新安値に放り出された。悲観絶望の極であった。

「虫うりの市松障子うすあかり 為春」

船場界隈では大型倒産の噂がしきりである。一件二百億円。事実上倒産しているとも言う。繊維業界は暗黒の時代に入っている。

北浜も暗黒である。第二第三の〝熱学〟が噂にのぼる。

すでに噂になって久しいのはテレビドラマ〝どてらい奴〟の主人公会社だ。株式市場も繊維業界も鬼神暗鬼の恐怖の時代に入っている。

総需要抑制。極度の金融引き締め。実需不振。仮需要停滞。

小豆相場も、このような四囲の環境悪に影響されている。

来期雑豆輸入ワク一千万㌦説もあって27日は小豆と手亡がS安に売られた。

迷走14号台風は浜名湖近辺に上陸後、北上して消えてしまった。

桑名筋は、その大量買い建て玉を辛抱たまらず投げ出してきた。

時に戦い利あらず投げさされた―という格好だ。

よもや台風に期待していたわけではなかろうが、供給の大量緩和(平年作予想。輸入ワクの大型化。実需不振)を見ては、毛糸相場のようなことにもなりかねず〝買っている者、皆気が持てぬ〟ところだ。

ともあれ、すべての経済環境が悪い。

グリコのお手上げ型だ。北浜では中井証券に検査が入って、グリコを買っていた目先筋が投げたものだから、グリコ安が全般の地合いを悪くして下げた。

小豆東京善波一節は六千六百九十六枚が出来た。

投げに対する利食いという相場だ。

桑名筋がどの程度投げたかが注目された。投げ終われば灰汁抜けると市場では冷静に見ている。板崎投げれど相場は死なずという言葉がある。彼も実によく戦ってきたが盛衰は朝露の如く雨中亦涙あり。

期近限月は四月二日の安値(八月一万五千二百三十円)を絞首台の踏み板が、ガタンと音を立てて落ちるが如き格好で一代の新安値に落ち込んだ。

九月限、十月限また然り。すべての限月は一代の新安値である。この時、人々はさらに崩れていくことを予想している。さらば二万円。はるかなる値段よ―と。

しかし、人生も相場も回り待ち、悲観絶望の時が陰の極になるものだ。

●編集部註
 この日、世間を震撼させる事件が起こる。ピアノの音がうるさいと団地住まいの男が階下住人を刺し殺してしまったのだ。

 天気や相場だけでなく、人心も荒れていた。

【昭和四九年八月二七日小豆一月限大阪一万七一三〇円・五一〇円安/東京一万六八八〇円・七〇〇円安】