昭和の風林史(昭和四九年八月二十二日掲載分)

下げ余地浅い 値ごろ観は無用

今年の小豆の作付け減は来年の小豆の作付け下現に繋がるだろう。下げ余地の浅い相場と見る。

「石垣の上おしろいのあふれ咲く 鯨洋」

夜九時過ぎの新幹線で帰阪する予定が朝九時半の新幹線になってしまった。

名古屋の田中弥之助氏の毒気に当たったのではな。

名古屋には悪友・高橋弘先生が着任している。先生はセカンド・ハウスでステテコを三枚洗っていた。

大同物産の山田社長と高橋先生と、頭が割れるようにイタイという藤野洵大兄にノーシンを呑ませ、お酒とウォーターウィスキーを少々だけ飲んだ。

田中弥之助氏は通産の当業界に対する行政をストップさせてしまった頑固親父で毎日格好のよい頭を電気カミソリで三分間剃る話を聞いていると蒋介石総統にそっくりだと思った。

毛糸相場の惨落で、ガッポガッポ儲かっている様子だ。久しく見ないあいだに大同の山田社長の頭髪も北海道の小豆の畠のように地肌がすけて見える。蒋介石総統の電気カミソリの話を山田さんは切実な顔で聞いていたから遠からず剃ってしまうかもしれない。

その横に六本木のネオンにやけて頭の三分の二が明るい高橋先生が、頭髪の話が早く済めばよいという顔つきで黙って盃をかたむけているから変なぐあいだ。

下り新幹線岡山行きの車中で頭はズキズキするし、お腹はジクジクする。昨夜は悪いお酒を飲んだと後悔しきりだ。

相場のほうは作付け六%減で買われたが、もうひとつ迫力がない。

しかしこの相場は一万八千円が非常に頑強である。

この堅さは売ってみないと判らない。買っている人は、なんともぬるいと思うだろうが、売っている人のほうが気が持てない。

これから秋の需要期にはいる。

そして天候相場の最後に足を踏み入れる。台風、早霜、病虫害が材料として残されている。

しかも小豆の作付けの減少は、来年度の作付け減もつながることで、ちっとも騰げていない相場がなぜ下がるかを考えなければならない。

人気で買いあげた水準ではない。仕手が煽ったわけでもない。

物の値段としてその値打ちを評価して付けている一万八千円ならば、値ごろ観は通用しないのだ。

●編集部注
値ごろ感で当るほど相場は甘くない。

性質が悪いのは、これがシュミレーションだとスケベ心がない故に当ってしまうという事である。

【昭和四九年八月二一日小豆一月限大阪一万七七七〇円・七〇〇円安/東京一万七六八〇円・七〇〇円安】