迷う人が多い 積極買いよし!!
小豆は、あれほど強かった人気が、まったく弱気に片寄ってしまった。二万円相場はこれからだ。
「鉄線のふかるる花のうらおもて 青朗」
ここから下には行きにくい小豆だ。
市場人気のほうは、まさしく〝青田ほめ〟で、二万円を言う人はいなくなった。完全に弱気支配の市場である。しかし相場はもう下げない。
生糸、乾繭、ゴムなどを強気していた有力な職業投機家・桑名筋が各市場でそれらを手仕舞っていた。彼は小豆も強気しているが、このほうは投げていない。
戦線を小豆一本に絞ってくるのではないかと市場で噂されている。
古い諺に「よく泳ぐものは、よくおぼれる」というのがある。河童の川流れだ。
日本陸軍は二方面、三方面作戦を最も下策な戦略としていたが、終局は八方破れで支離滅裂な戦略になってしまった。
桑名筋にしろ静岡筋にしろ、見ていると随所に焦りがある。昨年前半までの、いうならインフレの申し子のような、インフレという御威光に乗った、半ば僥倖(ぎょうこう)の勝ち軍(いくさ)とは相場の性格が変わっているのだが、過去の実績からくる過信があるため、無理が生じ、焦りが生じる。
あれは僥倖に過ぎなかったのだ―と原点に戻って、過去の栄光を全部ぬぐい去らねば、相場の本当の怖さ、相場の大きさを知らずに無理を重ね、あたら兵馬を死地に投ずる。
〔馬上を以て之を得るもいずくんぞ馬上を以て之を治むべけんや〕という言葉がある。
〔兵、驕る者は亡ぶ〕。
われわれは、流れが変わっていることを知る。桑名筋が投げた商品は、〝あく抜け〟と見られ歓迎の花火を上げた。
相場界は、時の権力者、実力者のポケットの中の弾の数をよく知っている。弱しと見れば野盗の如く群り強しと見れば媚び迎合する。
だが〝兵法は労に乗ず〟である。疲労したところを衝く。相場市場が戦いならば、またそれも止むを得ない。荀子(じゅんし)は喝破した。〔人の性は本来悪なり、その善なるは偽なり〕と。
さて、小豆は二万円相場の前々夜が終わり、いよいよこれからが前夜祭である。
かなり人気を弱くしたあとだけに面白くなる。
●編集部註
迷いなき一点突破戦略。 間違ったら損切りするだけなので、リスキーに見えて存外安全である。
問題はどこで〝シマッタ〟と判断するか。当った場合にどこで退出するかである。
【昭和四九年五月一五日小豆十月限大阪一万六八六〇円・一〇円高/東京一万六七四〇円・二〇円安】