警戒心が強い だから天井せず
大きくふくれあがった富士商品の売り玉が壮烈に踏んでくるまでは、この相場の基調不変。
「此村を出でばやと思ふ畦を焼く 虚子」
山大商事の関口明営業部長は現在の小豆相場を明快に分析してくれた。
彼は人を見たら餡入りの大きな饅頭や、餡の缶詰だとか、時には水羊かんなどを食え食えとと押しつける悪い癖があるけれど、他意があっての事ではないから見逃すけれど、餡入り饅頭を押しつけるのは実に殺生である。
『現在の相場の環境は<利食い先行型>で湧いたところを利食いして、押したから買いたい―が、なかなか買いにくい。
相場としてはまだ若いし、一万穴千円どころで踏まされたり、一万四千円近くで投げ出したような、エキサイトした場面
はまだない。いうなら鬼神も哭くという場面。これが無いあいだはパターンも変わらないと思う。
ただ、値ごろとしては百万俵の産地供給力のある現在、これがどの辺りから動き出すか。
また古品が一応末端まで行き渡り彼岸、節句等の需要に見合うものがとどいている。しかし予想される春闘による物流の停滞や四月以降の物価再上昇など硬材料との兼合いという事になる。
もうひとつは強力な投機家の動向。買い方は大勢観で先々と夏の天候と世界の食糧不足を戦略の支柱として戦線を伸ばしていくかどうか。一方専業大手に見られる巨大なる売り玉。ここから千円ぐらい上まで頑張るのか、あるいは、もっと頑張るのか。それとも一気に踏んでくるのか。ともかく世界の異常気象は判然としてきたし、北海道の天候についても予想が絞られる磁気に来ているため、いよいよ面白くなってきた。今の段階では噴き値利食い。押し目買いの姿勢でよいと思う』―。
相場基調は少し沸いたな―と思うとすぐ反省して押し目を構成する。酒飲みが深酒して他人に迷惑をかける。その次の日は前日の事を後悔して慚愧にたえん。しかしまた飲む。それと同じようなものかもしれない。
熱狂が続かないという事は、まだ冷静さがあるからで、その限り天井は打たない。
天井するときは白熱である。
富士商品の目立つ売り玉が踏んでくるまでは、この相場の基調は不変と思う。
押したら買おう、押したではないか。押したら買いにくい。「たら」と「えい」は食い合わせ。えいと買え。たらは駄目。
●編集部註
ゴリゴリの強気筋は、相場がこの年の大発会に向かう事を夢見ている。
【昭和四九年二月二一日小豆七月限大阪一万六四四〇円・九〇円高/東京一万六三一〇円・一九〇円高】