昭和の風林史(昭和四九年二月二一日掲載分)

上伸に加速度 三千円ひと相場

相場の基調は依然として強い。上昇エネルギーが爆発しよう。若い相場の大直り途上と見る。

「春泥や夕暮すこし冴え返り 余子」

昔まだ小豆相場が今ほど大衆化していなかったころ、笹川某が小豆相場に手を出して非情に大きく曲がっていたもので、曲がるのも当然、小豆を買う時は、北海道農民、生産者のため、安い小豆を放置しておけないから買うのだ―という。

逆に売り方に回ると手の平を返したように消費者のために売るのだ―と、必ず屁理屈がついた。

筆者は、阿呆かいな―といつも思っていた。農民のためだとか、消費者のためだとか、いい格好つけて曲がって損していたら世話はない。

本来、相場するのは手前が儲けたいがためにするのである。だから政治家とか右翼とかいう種族は嫌いだ。
なにかと言えば国家のため、国民のためと、わめき騒ぐ。

今の小豆相場を、それに似たような〝おっちょこちょい〟が弱気していると専らの噂。親分筋に似て物価抑制のためとか、消費者のために売るのだ―と言いかねない。

この相場、下がると思えば黙って売ればよい。いちいち屁のつっぱりにもならぬ屁理屈を垂れる必要はない。
選挙が近づくと商品相場にも種族の変わった思惑玉が出る。選挙資金を稼ごうというわけだが、相場は先生方が考えているほど簡単ではない。

週刊朝日に連載していた松本清張氏の小豆相場の小説を光文社のカッパ・ブックスから〝告訴せず〟の書名で広告している。

広告文には〝商品取引の実態を暴きつつ悪の断面を鋭く剔出する…〟とある。松本清張氏は東京穀物に数回取材に来ていた。

昔、〝赤ダイヤ〟という小説がテレビドラマとなり、映画にもなった。

この小説やテレビのお陰で小豆市場が全国的にPRされ、大衆化の一役を担った。松本清張氏の小豆相場を題材にした小説が、どのような影響を与えるか関心が持たれる。

相場のほうは五千円を素通り、六千円を突き抜けて勢いをまだ出しきっていない。場所としては三分の二戻しの急所にさしかかる。警戒人気は強いが、それだけに上値を残している。相場の基調を見る限り強気一貫のところ。

●編集部註
 選挙資金捻出のために株や商品が大きく動く話は、平成の御世でもまことしやかに囁かれていた。
 真相は、闇の中である。
 この記事が掲載された翌年の二月。「告訴せず」は青島幸男主演で映画化。この作品、今でもDVDで観る事が出来る。

【昭和四九年二月二十日小豆七月限大阪一万六三五〇円・四〇円安/東京一万六一二〇円・一三〇円安】