昭和の風林史(昭和四九年二月一日掲載分)

玉整理進行す 天災期限月期待

さしもの下げも落ち着いたようで、玉整理も進行した。七月限の登場で人気も引き締まるところ。

「銀ねずに朱のさばしる猫やなぎ 蛇笏」

二月。早春。余寒。冴え返る。節分厄払い。立春。紀元節。雲にそびゆる高千穂の。爆弾三勇士。廟行鎮の敵の陣―。

如月(きさらぎ)という言葉の語感は、冴え。凛厳。寒烈などに通じる。しかしまた、春近し。早春。梅花という、なまめかしさもある。

一月に厳しい下げ場面を見せた商品市場は、一様に節分前後の節変わりを期待している。

急激な反撃ありとする者。いや、さしもの崩れもようやく落ち着いて、底練り段階と見る者。不況下の商品市場は長い尾を引きずってすぐには回復出来ないと悲観的な人。さまざまである。

きょう、天災期限月の七月限が注目のうちに登場する。颯爽と―と言いたいが、どうだろう。

天災期限月の七月限と、九月限の二本は、これは筆者だけの考えかもしれないが、なんとも粋(いき)な限月である。

たとえていえば一等巡洋艦〝妙高〟の煙突のカーブの線。あるいは高雄型第二艦〝愛宕〟の前甲板と砲塔の姿―などといっても、馬鹿か、といわれるのがおちだろう。

筆者は生まれる前から軍艦に乗った。基隆港に聯合艦隊が寄港する。大きなお腹をした母親が戦艦〝長門〟に招待された。そして次の日かに生まれたから生まれる前から軍艦に乗っている。そのせいか、軍艦が好きで太平洋戦争前には寄港するたいがいの軍艦に乗せてもらった。軍艦には匂いがある。この匂いがたまらなく好きだった。

七月限の事から横道にそれてしまった。相場に曲がるとこれだから嫌だ。

七月限や九月限は粋だが八月限は汗くさい。そしてもう納会で落ちたから言ってもよいが一月限という限月は野暮ったい。

七月限が、どのくらいサヤつけて生まれるか。

それによって市場の人気も変わる。

値段の点から申せば仮に高値掴みの玉があっても七月限のこの低水準での生まれは買ってみたいところだ。

言える事は、充分に下げただけに、上にいくゆとりが出来た相場で玉整理も進んだ。

●編集部註
 時は平成。妙高も愛宕も長門も大日本帝国海軍の戦艦が全て少女に擬人化されたゲームが大人気である。風林火山が存命中にこの流行に遭遇していたら、果たしてどう反応したかを想像すると面白い。

 相場に曲がるとあれやこれやと思考が脱線するのは古今東西変わらない。

 当の本人以外はそれを「現実逃避」と呼ぶ。

【昭和四九年一月三一日小豆六月限大阪一万五〇六九円・三四〇円高/東京一万五〇一〇円・三一〇円高】