昭和の風林史(昭和四九年三月二二日掲載分)

駄目押し完了 大勢は強気一貫

彼岸底型のダメ押し完了と見る。相場の大勢は、やはり天災期を先に控えていて買いしかない。

「彼岸寺障子しまりて法話かな 三千春」

なかなか暖かくならない。

半袖シャツで汗をかいていたことを思うと、印度洋の見えるペナンや、真上を仰ぐと南十字星がまたたいているジャカルタに〝帰り〟たくなる。

めったに夢など見ることはないが、帰国してからシンガポールの街を歩いている夢などよく見る。

自分の体質が東南アジアの気候風土に合っていることを知る。むこうにいるあいだは体中が不思議なほど充実していた。

また、どこへ行っても一種異様な匂いのする、その匂いが、故郷に帰った時のように懐かしく感じた。

大道の屋台店で売っている中国風の軽便な食べ物を好んで食べ歩いた。日本にいて覚えたことのない食欲がふつふつと湧いてくるのだ。

もう一度行きたい―というようなものではなく早く〝帰りたい〟という気持ちだ。

この事は自分で非常に危険なものである事を知る。

むこうで職を探し、永住する計画などを真剣に考えている自分を見て、ハッとする。まだ南洋ぼけが抜けていないのかも知れないが日本は息が詰まる。

気をとりなおして小豆相場の事を考えようとする。

相場の高い安いの一喜一憂も必要な事である。

損した儲けた、あいつが憎い、こいつが好きだ、そのような感情も必要なことではあろうが、白雲悠悠、人生功名誰が論ぜん。

千円棒を入れた相場が彼岸底型。

鐘一ツ売れぬ日はなし江戸の春。

もうすぐ桜花爛漫の季節。

需要最盛期である。

商品市場に雲集していたあれほどの投機人気が、どこかに行ってしまったが、もうしばらくすれば、天災期に思惑する投機家が、また戻ってくるだろう。

七月限の一代棒では19日の寄り付き値が半額押しの地点。

大衆売りのクロウト筋の買いという今の相場、終局的に二万三、四千円を目標にしている。市場は静岡筋、桑名筋の動向が、あたかも小豆相場のすべてを支配するかのように重視している。

筆者は、そういう材料や動向は、単なる一場面、一場面の香辛料みたいなものであって、小豆相場のいわばアクセサリーだと思う。

●編集部注
当時の相場心理の細かいところまでは判らない。判るのは、値動きのみである。

この時、相場は前月の上げ幅の半値押し水準。

反転したら、修正完了全戻しを夢見て買う玄人が増えるのではないか。

【昭和四九年三月二十日小豆八月限大阪一万六二八〇円・一八〇円高/東京一万六〇九〇円・一一〇円高】