昭和の風林史(昭和四九年一月九日掲載分)

新春酩酊随想 高安は時の流れ

高ければ安いし、安ければ高いし、あたかもそれはシーソーのようにしながら水準を高める。

「粥あつしまどかに落す寒卵 忠一」

縁側にまでお正月の陽がさして、石油ストーブとガスストーブと電気ストーブとをお正月だから全部赤々とつけて、お座敷に温度計を置いて二十七度ぐらいまで室内をあたため、さっぱりと浴衣(ゆかた)に着がえ、庭の日の当らない場所に積み上げて充分に冷やしておいた麦酒を飲もうと思った。

すでに、こういうことをしようとするからには、かなり酩酊している。

日本酒を呑んで、ウィスキーのソーダ割りを飲み、山中国男氏から戴いた一九六七年産の白葡萄酒を一本あけて、デザートに麦酒という趣向である。

寒月懸れる針葉樹林

橇の音氷りて物皆寒く

野もせに乱るる清白の雪

しじまの暁ひひとして舞ふ

ああその朔風飄々として

すさぶる吹雪の逆巻くを見よ

ああその蒼空梢つらね

樹氷咲く壮麗の地を此処に見よ。

ラジオで北大恵迪寮寮歌をやっている。

歯切れのよいこの寮歌を聞いていると商品研究所の菊池栄氏が目の前で酔っぱらっているような錯覚に陥った。菊池氏の横に森川直司氏がいる。東穀の森川氏は寒の滝にうたれて精悍そのもの。森川氏は小生が海に落ちた夢を見たという。僕は菊池の栄ちゃんが歯をはらして田中さんみたいに顔のゆがんでいる夢を見た。

うづまく硝煙飛び散る弾雨、万兵ひとしく大地をけってオーターローは、かばねの小山、運命いかにああフランス、運命いかにああフランス。

などとやっていたら相場がどちらに動いてもいいと思うようになってきた。

読者は、きっと、こう思うだろう。風林はまだお正月気分が抜けよらん―と。

左様。大阪は、えびすさんが済むまではバタバタしない事になっている。

そして当社では去年の暮れ土井健三、西沢徳三両氏からお歳暮に戴いた(ように思う)こもかむりを開けなければお正月は済まない。

さて、相場はと眺むれば高きもあり、安きもありてお目出たい。

小豆相場にしても安ければ高くなるし、高ければ押したりするのがよい。

●編集部注
過去の事象を調べてみると、いろいろ面白い。

昨年、世界遺産に登録された軍艦島は炭鉱の島であったが、この年の1月に炭鉱が閉鎖。4月までに全島民が島を去る。

【昭和四九年一月八日小豆六月限大阪一万七五〇〇円・一〇円安/東京一万七四四〇円・二〇円安】