昭和の風林史(昭和四九年四月三十日掲載分)

待ったなし!! 八千円抜け必至

九月限の八千百五十円は時間の問題。売り方は首をかしげる。早すぎるというのだ。

「揚雲雀高圧線のたるみをり 恒明」

東繊取内の椙森句会は三宅応人先生、協会長の武田恒明氏、東繊取事務局の山本さかえ氏などの熱心な活動で活況をきわめている。前記の句は武田氏のもので、三宅先生は〝雲雀野に高圧線のたるみをり〟とこれを添削された。そうしてみるとなるほど―とうなずく。

久しぶりで繊取をのぞいてみたらビルの玄関も六階事務室廊下も労働組合の闘争のためのステッカーがにぎやかに張られ、所員は赤い腕章を巻いていた。

村井宝作専務は、心なしかいつもの元気がない。体調を崩し血尿止まずと聞く。いろいろと心労多かりし昨今、切に御自愛、御養生を願うものである。山本博康氏も心配されて、先生から高貴薬等をいただいたと村井氏はいう。

筆者は村井ホラ作氏の元気のない姿を見て淋しかった。彼の現在の念願はインパール街道で戦死した多くの戦友の霊を慰めに行く事である。マレー半島ソンゴラに上陸してシンガポール作戦に従軍。その前は徐州作戦に参加、シンガポール陥落後は、第十六軍傘下第二師団のバンダムワン上陸に戦い、バンドン占領、息つく間もなく次はインパールに転戦した。戦塵にまみれた若きエリート将校はいま繊取ビル六階役員室で昔を思い、そして常夏の島に咲くブーケンビリアやポインセチアの墓石の間に点在する赤い花を遠くに思うのであった。

さて小豆相場の週末の引け味は、前日の線を大きく抱きかかえて、ゆるむ事のない陽線引け。地合いはまさしく明るい。
新値である。

これが五月新ポ、産地に49年産限月が生まれれば、熱気充満、四連休を控えて九月限の八千円大台乗せは必至であろう。

場面は、まさしく刻一刻と天候相場のエキサイトした穀取市場独特の雰囲気に浸ろうとしている。

売り方は、かなり動揺している。

早すぎる―と首をかしげるのであった。

しかし、付いた値が相場である。売り込みが不足であろうと、なんとこの力強い相場の足取り。

相場は相場に聞け。

九月限の八千百五十円は時間の問題である。

前進の旗は薫風になびく。

●編集部注
 南方戦線の地獄絵図は大岡昇平の書いた小説『野火』を読むと良い。昨年塚本晋也の手で映画化された作品もお勧め。

 南方の空と海と緑。その美しさが、かえって戦況の悲惨さを引き出す。

 戦史でインパール街道には〝白骨街道〟という異名がつけられている。

【昭和四九年四月二七日小豆九月限大阪一万七七四〇円・一四〇円高/東京一万七七一〇円・一二〇円高】