昭和の風林史(昭和四九年四月四日掲載分)

下値見届ける 出直り期待充分

冬ごもりの季節は終わりを告げた。一万五千円は底値という反騰劇。いつ出直るかに焦点を…。

聞いてみると、どこの店(取引員)とも取り組みはほぐれたという。

投げるものは投げ、安値を叩いたトガメが長い陰線をすっぽりと包む陽線をぶっ立てた二日の相場ではなかろうか。

産地農協も農家の強腰を映してか途端に売り止める。そして人々は産地―消費地間の異常なサヤ詰まりにいまさらのように驚く。

ここにきて、千円戻しの一万六千五、六百円どころは望めるとの声多し。が、それも〝地上二メートルの枠〟を出ない超目先的な観点にすぎない。

息せき切って訪れる春。

くぐり抜けなければならない儀式《天候相場を迎える前の玉整理》は終えた。

四月は冬ごもりの間に蓄えられたエネルギーを放出する月でもある。

昨年十一月以降の一万六千円ラインを主軸にした大もみ合い、内蔵する尨大なエネルギーをもてあましている姿だ。

あまりにも種々雑多な要素に満たされ、互いに反発し合い、相殺し、あるときは中和す。

真の饒舌は静かという。

相場は戻しては売られ、売られては反発するうちに頂点に達して爆発する。

生きている相場をズタズタに解剖したところで何が判るというのか。需給、産地の動き、消費地の現物の売れ行き、過ぎ去った足取りを示すケイ線、仕手関係、取り組み、その他もろもろの材料…。結局はそれだけのことだ。あたかもそれはプラスチック製の人体解剖図をみて「人間」のすべてが判ったというに等しい錯覚にすぎない。

摩周湖はカムイト―《神の住む湖》と呼ばれる。水面は七色の変化を見せるともいう。

今年の異常気象、世界的な食糧危機問題、恐らく今夏の小豆相場は七色どころか、十色、十二色の変化に富んだ模様を描こう。

ともあれ、誰が売ろうと先限の一万五千円以下を叩き切れないことは明らかとなった。

極端に不人気の手亡でさえ一万四千円以下に用なしを思わせる強烈な反騰を演じている。

どこまで戻すか―というよりは本格出直り(放れ)はいつかに焦点をあわすところであろう。

●編集部注
平成二七年四月に東京で『蔦監督―高校野球を変えた男の真実―』という作品が公開される。

昭和四九年四月の選抜高校野球で脚光を浴びた徳島池田高校野球部監督蔦文也の生涯を描いたドキュメンタリーである。

【昭和四九年四月三日小豆九月限大阪一万六二二〇円・四九〇円高/東京一万六一八〇円・四八〇円高】