前途洋々たり 安ければ仕込む
さあてと座りなおして回りを見渡すと、居心地よさそうな相場の居所。安ければ仕込んで判りやすく。
巧妙にカムフラージュしたつもりでも世間の眼は容易に誤魔化せぬもの。いや、相場に誤魔化しは通用しない。
高値の玉を抱えて、あと四、五百円も上がれば―という向きは相当に多いが、まるで懐ろを見透しているかのように、あと少しのところで皮肉な表情を浮かべて相場は回れ右をする。
千円戻しでほっと安堵した強気も、相場の居所を改めてみると、高値と安値の中間地点、倉庫はストだし、十一~十二日は春闘のクライマックス(ゼネスト)、〝花見相場〟に浮かれるのもほどほどに―と気持ちを引き締め、さあて、と座り直して相場の呼吸をうかがうところ。
先月に受け渡しされたヒネ小豆、市中にいつ出回るかと見ていたら、どことも『しばらく塩づけにしてますヨ。全量クレームを申請し、値引きになればそれだけ儲けもの』という。
市場が少しヒマになると話題になるのが仕手動向。
静岡筋はドテン売り転換しているよう。
いや、そんなことないでしょう。中井さん、懐ろ玉の動きを見ていたら、まだ相当に買い玉が残っていますよ。
桑名筋はどうですか。
あの人、根は強気ですよ。先日の売りにしても、叩いておいて安値を仕込みたいハラがうかがえるよ。
最近、本社ビルを新築した店も活発に動いているようですが…。
どうなっているのか、むずかしくて、よく判りません。
京橋筋も〝ハナ〟を取りにいくあたり、強気方針は不変―というところですか―。
人の噂であるから、どこまで信じてよいものやら。案外マトをついているかも知れないし、まるで見当外れかもしれない。
どっちでもよいというわけではないが、大体、人の口の端にのぼることといえば、まあ、いってみれば顕微鏡下にうつる最近のうごめきに注釈をつけている場合が多いものだ。
いずれにしても相場がひとにぎりの仕手の動きに振り回されるのはのほほんのひとときに過ぎない。
仕手崩れの真最中はどこまで下がるのかと背筋が凍るが、動揺がおさまって、すぐに反騰に転じると、なんだァ―という寸法である。
相場の方は安いところを拾っておけば将来が楽しめよう。
●編集部注
これまで何度も書いてきた事だが、相場様は意地悪できまぐれある。
「押し目待ちに押し目なし」とは名言である。
【昭和四九年四月四日小豆九月限大阪一万六〇七〇円・一五〇円安/東京一万六〇三〇円・一五〇円安】